軽症のコロナは、夏風邪に似た症状だが、寝ていれば治るという単純な話ではない。
「多くの方は重い風邪ぐらいの症状で終わるので、熱を下げるなどの対症療法で時間が解決するもの、と思うことが肝要です。ただ、一部、リスク因子を持っている人が重症化する可能性がある。その時に適切な治療ができないと危険なのです」(田代医師)
Q5「重症化への急変サインは?」
「体温は39度くらい出ることもあるだけに、それだけで重症かどうかを判断することはできません。その点、呼吸数はかなりのバロメーターになるはずです。一般に1分間に30回以上だと頻呼吸と判断しています。つまり30回を超える場合は危険な状態です」(近藤医師)
ちなみに成人の正常値は1分間に12〜20回だ。
より明確な決め手になるのが、パルスオキシメーターで測定する酸素飽和度である。
「酸素飽和度96%未満で中等症Ⅰ、93%以下は中等症Ⅱという基準になっています。手が震える、声が震える、深呼吸で咳が誘発される、トイレに行くのに息が切れるなど、経験を積んだ医師でなければ判断できません」(田代医師)
目下、コロナとの戦いでは必須のアイテムとなっており、
「たとえ軽症者でも酸素飽和度が急変することがあるので要注意。酸素飽和度が93%を切り出したらピンチです。そこでデキサメタゾンなどステロイド系の薬を投与すると、早くよくなることが多い。ただ、コロナでは、自覚症状のないまま呼吸状態が悪化する〝ハッピーハイポキシア〟という現象があり、苦しいなと思って調べてみると70台にまで落ちているというケースも実際にありました。いかに的確なタイミングで適切な治療を行うかが大切。本来、中等症Ⅱは家では診てはいけないレベルの状態なのですが‥‥」(田代医師)
近藤医師もその危険性を訴える。
「ホテル療養されていた30代の男性が呼吸苦ということで診断したのですが、酸素飽和度は80台にまで落ちていました。そのためすぐに入院適応と判断しました。糖尿病など基礎疾患がある方は呼吸困難を感じなくなる方が多いため、いち早く呼吸の状態を把握することが重要です。注意しなければならないのが、発症から1週間くらいの時期。ここで急に悪化する人が多い。じっとしていれば大丈夫でも、トイレに行ったり、食事をするだけで息が切れる時には疑うべきです。パルスオキシメーターで酸素の数値を計測して、異変があった際には保健所に連絡することが大事です」(近藤医師)
パルスオキシメーターは保健所などで貸し出しも行っているが、現状では届かないケースも出てきている。不安な場合にはネットで購入しておくべき自宅療養者の必需品だろう。
*(3)につづく