80年組や82年組ほど定着はしていないが、85年以降に「アイドル四天王」という言葉があった。斉藤由貴、浅香唯、中山美穂、そして15位に「話しかけたかった」が入った南野陽子である。
「歌の主人公は結局、好意を寄せている相手に一度も話しかけることができないまま。その奥手な世界観を、ハイソ感を漂わせながら、だけどしっかり親しみやすさも感じさせる美少女がビブラートを徹底的に抑えつつ、いささか頼りなげに歌う。堀ちえみや星野みちる(元AKB48)など、歴代アイドルもカバーした名曲です」(音楽評論家・原田和典氏)
ナンノの歌手デビューにあたっては、スタッフが兵庫県に住んでいた頃の校舎や坂道などを取材し、それを歌詞に反映させたというエピソードも残る。16位には「20世紀最後の正統派アイドル」と秋元康が命名した高橋由美子の「友達でいいから」(94年)を。お笑い芸人のユリオカ超特Q氏が思い入れを語る。
「いよいよアイドルが冬の時代と言われた90年代、孤軍奮闘したのが彼女でしょう。この曲は『南くんの恋人』(テレビ朝日系)という小さくなった女の子が主役のドラマの主題歌ですが、荒唐無稽な設定を、切なく純真な歌唱で支えましたね。浅香唯の『セシル』(88年)と並ぶ青春ラブソングです」
聖子と同じ80年にデビューした岩崎良美は、5年後にアニメ主題歌の「タッチ」(85年)が大ヒット。日本歌手協会理事の合田道人氏が言う。
「姉の影響もあってか最初から『歌のうまいアイドル』路線で、デビュー2カ月で彼女よりアイドルチックだった松田聖子が、さらにその2カ月後に河合奈保子が登場することで、アイドルというより歌のうまい歌手のイメージがついた。そして、彼女を再ブレイクさせた『タッチ』が、いろいろな意味でアイドル歌謡の頂点と言っていいだろう」
13年にはAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」が国民的な支持を得た。前出・ユリQ氏が実感を込めて言う。
「僕の子供が当時2歳だったんですけど、この曲が鳴り出すとピタリと泣きやむんです。曲調が激しすぎず、どこか懐かしさもあって、さらに淡い恋心と前向きなメッセージがバランス良く成立していたのが支持された要因でしょう」