北朝鮮の国営メディア・朝鮮中央通信は8月7日、「金正恩同志が黄海北道銀波郡大青里一帯の洪水被害状況を現地視察した」と報道。同氏が水害現場を視察する様子を収めた写真を公開した。ところが、その写真に映っていたのは、なんと泥で汚れた黒い「レクサス」の運転席に座る金委員長の姿だったのである——。
このニュースを伝えたソウル聯合ニュースによれば、レクサスは「LX570」とみられ、2018年9月に平壌で行われた南北首脳会談や、昨年12月の陽徳温泉文化休養地の完工式などでも目撃されているというが、
「2015年にも一度だけ軽飛行機を操縦する金委員長の姿が朝鮮メディアに公開されたことがありますが、今回のように車両のハンドルを握ったカットが公開されたのは初めてのこと。金委員長は普段、防弾使用のメルセデス・ベンツで移動していますし、しかも、今回ハンドルを握っていたのが、罵詈雑言を繰り返す日本の車ですからね。そういう意味でも、大変珍しい写真と言えるでしょう」(韓国在住のジャーナリスト)
今回、同氏が視察した水害現場の黄海北道銀波郡の大青里は、平壌から150キロほど離れた距離にある。ソウル聯合ニュースは、「この距離を自ら運転したのではないだろうが、少なくとも水害現場ではハンドルを握った可能性がある」とし、「災害現場に迅速に駆け付け被災者を励ます思いやりのある指導者のイメージを狙ったものとみられる」と伝えている。
当然ながら、この報道を受け敏感に反応したのは、韓国のネットユーザーだった。SNS上には《日本の悪口を言いながら日本車に乗ろうなんて最低だ!》《表では反日不買、裏では日本製品愛用か?》《被災した住民たちの多くが泥まみれで死んでいっているのに、高級車で現場に現れるとは、さすが将軍様!!》といった声が続々寄せられた。
とはいえ、国連安全保障理事会の制裁決議で日本からの北朝鮮への自動車の輸出は禁止されている。北朝鮮はどうやって、日本の高級車を入手したのだろうか?
前出のジャーナリストが語る。
「普通に考えれば、中国向けに輸出されたレクサス(左ハンドル仕様)を海上コンテナに積み込み陸送したか、あるいはロシアルートといったところでしょうが、北朝鮮はこれまでに300台近いレクサスを輸入している、との噂もありますからね。日本車びいきであることは間違いない。ま、父親と祖父の葬儀車もフォード社のリムジンだったことを考えると、反米を掲げるわりには、その手の車はアメ車を選ぶ傾向にあるようです。これはあくまでも噂ですが、金委員長は若い頃、夜中にお忍びで平壌市内をベンツやハーレーで流していた、なんて話もありますからね。結局は、本音と建て前を使い分けているんでしょう」
韓国メディアによれば、金委員長が初めて平壌で車を運転したのは7歳の時。しかも、車種は「メルセデス・ベンツ600」だったと伝えられている。
そんな”走り屋”でもある金委員長の目に叶ったのが、トヨタの高級車「レクサス」だったということか。日本車を運転するならば、せめて大事故が報じられないよう、安全運転に努めてほしいものだ。
(灯倫太郎)