プロ野球が開幕してすでに1カ月が経過している。じつは1カ月を過ぎたころ、通常シーズンであれば、“恒例行事”が秘密裏に行われている。だが、今季は新型コロナウイルス禍により、例年のペナントレースと様相が違う。そのため、主に“イベント”の対象となる二軍選手たちは、「今年も恒例行事が行われるのか、いや、本当に行われたのか?」と疑心暗鬼になっている。
その“恒例行事”とは、「戦力外」の事前通達だ。通常のペナントレースであれば、「1カ月を過ぎて」という時期は5月中。実はこの時期、プロ野球各球団はコッソリと戦力外について話し合いをするのが慣例だ。
「球団によって、若干のばらつきがありますが、ある数字をもとに、フロントと二軍コーチが話し合いをします。高卒の打者であれば、通算で1000打席に立たせ、投手ならば、150イニングを投げさせ、この先、見込みがあるかどうかを判断します。ところが全選手がこの数字をクリアできるまで現役を続けられるわけではありません。また、チームの来季の構想を練るうえで、ベテランの去就についても判断を下さなければいけません。TBSの人気番組で『戦力外』をテーマにしたドキュメンタリーの密着取材が始まるのも、ちょうどこの頃です」(球界関係者)
この1カ月後の話し合いには、打者ならば7〜800打席に立った者、100イニングを超えた投手も含まれ、「彼らは判断基準となる数字に到達するまで球団に置いておく価値があるのか、ないのか」という質問が、フロント職員から二軍コーチ陣にぶつけられるそうだ。
二軍コーチ、つまり、“野球のプロ”から見た評価も聞くが、たとえば、打者であれば、打撃担当コーチと守備走塁コーチで意見がわかれることも多い。フロントはカウント別の打率成績など細部に渡ったデータを見せ、コーチ陣と話を詰めていく。
そして7月中にまた内々に集まって“戦力外の協議”をし、最終決定に近い結論を出すそうだ。
「戦力外と内々に決まった選手は、遠征メンバーから外れるなど出場機会が奪われていきます。本人も『ヤバイ』と察し、ここから奮起する選手もいますが、その裁定がくつがえることは稀です」(前出・球界関係者)
7月以降、また何度か話し合いの場が設けられる。その際、ボーダーライン上にいる選手、すでに内々の烙印を押されてしまった選手が奮闘していたら、コーチやフロントは「ウチの球団ではダメでしたが、頑張っているので…」と、他球団に連絡を入れるという。
細部に渡ったデータをもとに話し合うと聞くと、ドライなクビ切りがされているようだが、温情もある。とくに今季は新型コロナウイルス禍で二軍は例年よりも試合数が少なく、判断が難しいところ。「この状況で選手を切れるのか?」と、疑心暗鬼になっているそうだ。
「8月に入ると、成績不振のチームのコーチが、『来年はクビになりそうだから、おたくで雇ってくれないか?』と移籍を打診してくることがあります」(ベテラン記者)
8月に入れば、台風などで日程はさらに過密化していく。ペナントレースの行方はもちろんだが、今後はグラウンド外の動きからも目が離せそうにない。
(スポーツライター・飯山満)