果たして、再浮上のきっかけとなるか!? 2013年に銀座に1号店をオープンしてから、全国に店舗を増やし、アメリカにも進出するなど、まさに破竹の勢いで店舗拡大を図ってきた「いきなり!ステーキ」。ところが、店舗網の急拡大によって、一部では客を奪い合う事態が起きたこともあって、往時に比べると業績が低迷。そこに追い打ちをかけたのが、今回のコロナショックだった。
結果、同社では現在もなお、新型コロナウイルス感染防止のため全店で営業時間短縮、または休業措置をとっているが、
「同社では業績回復に向け、今年1月に第三者割当増資による新株予約権を発行したんですが、株価は行使価格の下限となる666円を下回り続け、2月には全体の15%近くにあたる、74店舗の閉鎖を公表しました。その直後のコロナショックですからね、厳しい状態にあることは間違いないでしょう」(経済ジャーナリスト)
と、そんな同社が今年の1月からネット通販で販売をスタートした「笑顔の見えるマスク」が予想以上に売り上げを伸ばしているという。
「もともとこのマスクは、同店で従業員が着用していたもので、口を覆う部分が防曇・抗菌加工が施されたプラスティック素材の透明フィルムでできているため、装着した人間の口元の表情がそのまま見えることに加え、飛沫を防げるのが特徴です。さらに従来の布製マスクと比べ、口元に密着しないため、息苦しさや暑苦しさ、聞き取りづらさから解放されるとあって、マスクが不足し始めた2月末から急激にニーズが高まり、3月には約1万3000個が売れたといわれています。なお、現在販売されているのは、従来の『笑顔が見えるマスク』に改良を加え、さらに軽量化されたもの。値段も10個入りで税込5280円(送料別)と、旧型よりもさらに安くなっています」(前出・経済ジャーナリスト)
さらに、4月には石垣市の中山義隆市長がツイッターで、市内にある「いきなり!ステーキ」から、このマスクを寄贈され、手話通訳者に渡したことを報告し、売り上げに拍車がかかったという。
「コロナ禍の中、市には記者会見の際、手話通訳者がマスクをつけていないのはいかがなものか、といった意見が多く寄せられていました。というのも、手話は手の動きと同時に表情や口の動きも文法として重要なため、マスクがつけられなかったのです。そこで、手話通訳者用のマスクを探していた矢先、市長が市内の『いきなり!ステーキ』で従業員が透明マスクを使っていることを知り、相談するとマスクが寄贈されたそうです」(前出のジャーナリスト)
現場の従業員が使っていただけに、その利便性は折り紙付きだが、実際にマスクを購入したユーザーからも、《マスクというと、むれる、暑い、息苦しい、人の話が聞き取りづらいと思いがちですが、これは口元に密着しないので息苦しさを感じません》(40代男性)、《上にスキマがあるので、会社の会議などでも相手の表情が見えるし、声がこもらなくてもいい》(30代男性)、《使い捨てではないので、ランニングコストが削減出来るので家計にも優しい》(30代女性)と、おおむね評判がいい。
これまで、業績不振が多くのメディアで取り上げられてきたが、「いきなり!」とはいかないまでも、マスク販売が業績回復のきっかけになるかもしれない。
(灯倫太郎)