幸は単勝平均配当1523円、単勝回収率121.90%で、61勝中15勝を6番人気以下で挙げている。特筆すべきは、ダートの勝利数が40と、芝の約2倍あることだろう。昨年、唯一の重賞勝ちも、みやこステークスのヴェンジェンスだった。7番人気だったが、後方から上がり36.5秒の末脚を披露して、差し切り勝ちを決めた。
「数年前までは、追い出してから馬の背に尻を付ける『トントン騎乗』をしていましたが、現在はやめている。膝と腰は落とすものの、以前よりスマートに騎乗していますね。18年のヴィクトリアマイルを8番人気ジュールポレールで勝った時のフォームはブレもなく、実にきれいでした。芝で結果が出ていないのは、単に騎乗馬の関係でしょう」(兜氏)
ところで、昨年デビューした35期生の騎手は、近年で最も優れた「黄金世代」だと言われる。1年目から斎藤新(19)、岩田望来(19)、菅原明良(19)の3人で110勝。多大な期待を持たれるのも当然だろう。今年に入ってもその勢いは止まらず、岩田望はリーディングのベストテン内に顔を出しているほどだ。
だが大穴万券騎手という視点から、実はこの3人以外に注目したい黄金世代の一人がいる。12勝でリーディング16位にいる団野大成(19)だ(昨年は26勝でリーディング42位)。
ターニングポイントとなったのは、昨夏の北海道シリーズ。先輩騎手と競い合う中で技術を磨き上げ、勝負に懸ける思いは一段と高まった。最終的に10勝を挙げたが、
「中でもルメール騎乗の断然人気馬フォルコメンを3番人気のレッドサイオンで差し切ってみせた函館の3歳以上1勝クラスが印象的でした。レース後、(同馬を管理する)藤沢師から『よくやった。今後も頼む』と褒められ、自信につながったそうです」(美浦の厩舎関係者)
このレースぶりでわかるように、キッチリと追えるのが魅力で、馬ごみをさばく技術も新人離れしていると評価が高い。スポーツ紙競馬担当記者も太鼓判を押す。
「斎藤や岩田望に比べると、騎乗馬の質が劣るのは否めない。なにしろ斎藤は安田隆行厩舎、岩田望は藤原英昭厩舎と、昨年と一昨年のリーディングトレーナーのところに所属しているわけですから。なのに現在は(10勝の)斎藤の上にいる。大したもんですよ。これから騎乗依頼がドンドン増えて、勝ち星を積み重ねていくことは間違いない。その中にはビックリするほどの大穴もあるはずですよ」
ちなみに昨年の単勝平均配当は1046円で、26勝中6勝が6番人気以下で挙げたもの。大穴万券の新星として台頭するか─。