先週の11月17日、英国のフィナンシャル・タイムズが、動画共有サービスTikTokが音楽配信事業を手掛けるため、ユニバーサル・ミュージック、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ワーナー・ミュージックとの間でライセンス契約を巡る交渉を行っていると報じた。
同紙によれば、早ければ来月にもインド、インドネシア、ブラジルといった新興国でサービスを開始したい予定で、その先にはアメリカでの展開も視野に入れているという。サービス価格は未定だが、先行するスウェーデン発祥のSpotifyやApple Musicの月額10ドルを下回る見込みだという。
ちょっと遠い国の話ではあるが、言うまでもなくTikTokは日本人でもおなじみのアプリなので、やはり今後の展開は気になるところ。だが、TikTokを運営するのは中国の会社のByteDanceだ。そこでサービス開始前からやはり“あの問題”が取りざたされている。検閲だ。
「TikTokが8月から急に歌詞に汚い言葉などの不適切な表現がアップされないよう制限しているとアメリカで報じられました。対象となった楽曲はTikTokにアップロードされないどころか、過去に上げたものまで除外されたということです。10月半ばには元に戻ったそうですが、TikTok側はエラーと説明したものの、要は何らかの基準で制限をかけているから生じたエラーで、要は検閲です。9月には英紙ガーディアンがTikTokの内部資料を入手したとしてその中身を報じましたが、それによると、厳しい閲覧対象だと『違反』として除外、『多少容認できる』対象は除外はしないけれども独自のアルゴリズムで表示回数を制限、人の目に触れにくく操作するとされていたようです。ちなみに安倍首相やトランプ大統領もこの対象で、習近平はOKだったとか」(ITジャーナリスト)
SNSから好ましくない表現を取り除きたいというのはある意味では健全な発想ではある。Spotifyでも2018年に政策的にこういった方針を打ち出したことがあり、事実、一部のアーティストがプレイリストから除外されたことがあったが、音楽という「作品」を制限することに音楽業界が反発、同社は制限を撤廃し、CEOが反省の弁を打ち出したという経緯がある。
「Spotifyは健全性を確保するための『ポリシー』ですから、悪気があっての行動ではありませんでした。ところがByteDanceの場合はバックが中国共産党ですからね」(同前)
ByteDanceでは国別の運営を行っているので問題はない、といった説明を行っているが、どうしたって不気味な気がしてしまうものだ。
(猫間滋)