アメリカ・カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が11月18日、トランプ政権とは異なる独自の排ガス規制に従って、トランプ側の立場に立つ自動車メーカーからの公用車の購入を来年から行わないと表明した。
同州ではすでに7月にフォード、ホンダ、BMWノースアメリカ、フォルクスワーゲン・グループ・オブ・アメリカの4社と排ガス削減での自発的な取り組みで合意していて、これを受けた措置となる。
「この決定からすれば、ゼネラルモーターズ、フィアットクライスラー・オートモービルズ、トヨタといった、グローバル・オートメーカーズが外されることになります。ロイターによれば、カリフォルニア州が2016〜18年に購入した金額では、GMが約64億円、フィアット約61億円、トヨタ約11億円とのことなので、けっこうバカにならない金額になります」(経済ジャーナリスト)
なぜこういった政府と州で異なったダブル・スタンダードが存在するのか。
「アメリカでは連邦環境保護局が排ガス規制を定めていますが、カリフォルニア州で独自に連邦よりも厳しい基準を設けているんです。一方で政府は、同州での適用除外を取り上げて基準値の緩和を含む新しい規制案を発表して、今年9月にはトランプ政権が連邦政府の基準に一元化、州の権限をはく奪しようとしていました。ところがこれに同州は反発して、ニューヨークなどを含む22の州と共に訴訟を起こして揉めている最中なんです」(同前)
この訴訟に参加しているのが、今回外されることになる「持続可能な自動車規制のための連合」に加盟するメーカーたち。連合には上記3社のほか、日産、スバル、マツダ、現代、起亜などが参加している。
実はこの“ねじれ”自体は環境政策にことさら重きを置いていたオバマ政権時代からの“負の遺産”なのだが、つい先ごろパリ協定からの本格離脱を表明した「緩和派」のトランプ大統領はカリフォルニア州の動きに反発、環境省ではカリフォルニア州と合意した4社に対し「独善プレイだ」と批判していた。自動車業界全体としては、連邦政府と州の協議を固唾をのんで見守ってきた経緯があるだけに、親子喧嘩に巻き込まれてしまった形というのが本音だろう。
だが事は同州だけでとどまるのか、さらには自動車業界だけにとどまるのか。トランプ大統領を忌み嫌う民主党の票田で起こった動きだけに今後が注目される。
(猫間滋)