ここ数年、町で家具屋を見かける機会がめっきり減ったが、改めて中小の家具店の倒産が急増していることが明らかとなった。その原因には、やはり格安な大手家具店の影響が多分にあるようだ。
「帝国データバンクの調査によれば、今年は10月までに家具店の倒産が26件発生。すでに昨年全体の倒産数13件の2倍となっており、東日本大震災が発生した11年以降としては最多になる見通し。また、経営破綻した家具店の多くは地域密着型の街の家具店であるといい、『固定客を中心に従来通りの中価格帯で“家具を売る”ビジネスモデルだけでは太刀打ちできなくなった』と指摘しています」(ネットライター)
日本家具産業振興会が公表するデータによれば、最も売上が落ち込んだ10年頃から家具の売上は堅調に伸びており、16年には1兆円超えを果たしているのだが、その恩恵を受けているのは、わずかな大手家具店だけだという。
「18年には国内家具売上高は約1兆2300億円ありますが、実は大手5社がその売上の6割を占めています。さらに言えば、売上高の約44%が『ニトリホールディングス』であり、一人勝ち状態にあるのです。その圧倒的な強さは、平成不況と言われる中で32年連続の増収増益というデータにも表れています。ニトリは、SPA(speciality store retailer of private label apparel)という企画から製造、小売までを一貫して行うビジネスモデルを展開しており、さらには物流までも自社で担う超一貫体制で、『一に安さ、二に安さ、三に安さ』という“ニトリ憲法”を実践する破格の値段で家具を販売。中小の家具店は付け入る隙がまったくと言っていいほどないのです」(経済ジャーナリスト)
結婚時に高価な家具を購入し、お金に困った時には質屋に入れて現金に換えていた時代は、とうに昔の話。ライフスタイルに合わせて気軽に家具を買い換えるのが普通になった今、家具業界はしばらくニトリの一強状態が続きそうだが、このままでは同業他社は駆逐されてしまいそうな勢いだ。
(小林洋三)