乳がん患者の100人に1人は男性/健康宅配チェックシート〈乳がん〉(1)

 国立がん研究センターが発表した最新データによれば、最も女性の罹患率が高いがんは乳がんだった。実に年間約9万7000人。それだけに女性特有の病だと思われがちだが、男性諸氏においても対岸の火事ではないようで‥‥。

「女性の乳房はふくらみを形成する脂肪組織と、母乳を作る乳腺組織で構成されています。乳腺組織の上皮細胞に悪性の腫瘍ができることを乳がんといいます」

 とは福岡県宗像市にある「林外科・内科クリニック」の林裕章理事長。乳腺組織は母乳を作る「小葉」と母乳を乳首まで運ぶ「乳管」で構成されている。

「細かく言えば、母乳を生成するラズベリーのような袋状の細胞の集まりが腺房。それがブドウの房のようにつながっているのが小葉です。そこから乳首までにつながる乳管は、乳房内に360度放射状に枝分かれしながら存在しています。乳がんの約95%が乳管、約5%が小葉に発生します」

 原因となる「がん細胞」は、健康な人でも1日に約5000個発生すると言われている。ほとんどが体内の「免疫細胞(リンパ球)」によって「5000勝0敗」の戦績で退治されるが、時として生き残ってしまうと、これがかなり厄介。長い年月をかけて変化と増殖を繰り返すのだ。

「個人差はあれど、1センチほどの大きさになるまでに10年かかると言われています。ところが、そこから細胞分裂は加速。2センチになるまでには半年から1年ほどしかかからなくなります」

 乳がんの主な症状は乳房のしこり。腫瘍が1センチほどになると、触ってわかるようになるという。

「痛みがない、硬い、触っても動かないという特徴はあります。もっとも、しこりの中にはがん化した悪性のものではなく、『乳腺症』などによる良性のケースもあります。触れただけで良性や悪性の判断はつきませんので、改めて医療機関での詳しい検査が必要です」

 乳房専門のX線撮影装置を用いたマンモグラフィ、エコー検査、MRI検査で病変を検出する。

「乳首や乳輪に湿疹やただれが生じたり、乳首から血の混じった汁が出たりする場合も乳がんを疑うべきでしょう。乳房にえくぼのようなへこみが生じるケースもあります。また、進行していくとワキの下のリンパ節に転移し、ワキの下にもしこりやしびれの症状を伴うことも」

 乳房のある女性が罹患しやすい病なのは間違いない。しかし、意外にも男性が発症するケースもままある。

「男性にも乳腺組織はあります。もちろん、女性と比べると少ないので、発症する頻度は非常に低い。とはいえ、乳がん患者の100人に1人は男性だと言われています」

 いつ誰がかかってもおかしくない病なのだ。

(つづく)

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