突然ですが、最近皆さんは地図を読む機会ってありますか?
Googleマップなどの地図アプリ(スマホ)やカーナビに頼ってばかりという人も多いのではないでしょうか。
今回、ご紹介するのは「地図地理検定」。地図記号や国内外の地図の歴史など、幅広い地図の知識が学べる検定です。
実際の試験では、地形図や景観写真などの読み取り能力を問う問題が多く出題されますが、次の例題のように、地図に関する知識も必要となってきます。
〈問1〉昨年、広島県立歴史博物館は、北海道を除く本州、四国、九州が描かれている日本最古級(14世紀半ばの室町時代)の地図が発見されたと発表しましたが、この地図の名前は①日本扶桑国之図、②国土地理院発行地形図、③大日本沿海輿地全図、④日本図(仁和寺所蔵)のうちどれ?
〈問2〉日本には標準時がひとつしかないため時差がないとされていますが、厳密にいえばあります。例えば日本最東端にある東京の坂本崎(南鳥島)と最西端の沖縄の西崎(与那国島)では30度以上も経度の差がありますが、時差にすると約①10分、②30 分、③1時間、④2時間のうちどれ?
実際の問題は択一式や記述式で出題されます。例題の答えは〈問1〉が①、〈問2〉が④となっています。
試験区分は「一般」と「専門」に分かれており、試験は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の各会場で行われます。
私はこの検定の前身である「地図力検定」1級に合格しています。
公式ホームページで公開されている過去問を見ればわかるように、気象や防災などさまざまな視点から問題が出題されるため、地図以外の知識も必要になってきます。
この検定を受けるメリットが大きい職業といえば、ふだんから地図を見る機会の多い登山家、自然写真家、考古学者といったところでしょうか。しかし、仕事に生かす機会がない人でも、地図の楽しみを再発見できるかもしれません。
例えば、横浜の町は海岸線を基準にして、平行または直角に道が作られていますが、中華街の一角だけ不自然に斜めの道になっているのをご存じでしょうか。
中華街の公式ホームページによれば、もともとその土地には田畑があった関係で、19世紀の開港からしばらくは区画整理がなされなかったそうです。風水を重んじる中国からの移民が中華街を形成していったのは、その土地こそが東西南北の方位に即していたため。つまり、中華街の一角だけが、東西南北に道が伸びており、風水上では周囲の横浜の街路が〝不自然〟ということになります。
最近では、昔の「古地図」を見ながらの散歩がはやっていると聞きます。土砂崩れ、浸水など災害リスクに備えるうえでも、地図および地形図の読み方を覚えておいて損はないでしょう。
(すずき・ひであき)