吉野彰氏のノーベル化学賞受賞で喝采も日本人受賞者は激減気配

 10月9日、リチウムイオン電池の開発に貢献した旭化成名誉フェローの吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞。吉野氏が科学に興味を持つきっかけとなった本として挙げた「ロウソクの科学」が増刷されるなど日本国内では盛り上がりを見せているが、一方で今後、日本からのノーベル賞受賞者が激減するとも予想されている。
 
「外国籍を含む日本出身のノーベル賞受賞者は総勢27名となり、これは世界でも6番目に多い数字となっています。平成以降の日本出身受賞者は19名で、吉野氏は本庶佑氏に続き2年連続での受賞者となるなど、今後も増えていきそうな気配に見えるのですが…」(社会部記者)

 論文データベース「Scopus」の調査によれば、15年までの10年間に世界全体の論文総数は80%増加しているにも関わらず、日本からの論文数はわずか14%しか増加していないというデータがある。また、元三重大学学長、豊田長康氏のレポート「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究」には、13年における人口あたりの論文数が日本は世界35位で、先進国としては最低という指摘があり、日本の研究者による論文数は圧倒的に減っているという現状がある。
 
「日本の研究者による論文が減っている原因はいたって単純で、優秀な若手研究者が育っていないからです。その理由としては、研究費が年々減っていることや、大学が若手研究者にポストを与えないこと、そもそも研究職に興味を持たない若者が増えていることなどが挙げられます。優秀な若手研究者が育っていないことを示すように、日本から海外に渡って研究をおこなう日本人研究者の数も00年をピークに減少し続けており、ここ数年は4000人を割り込む寸前まできています。お隣中国では15年の海外留学生数は52万人とされており、もちろんそのすべてが研究者というわけではありませんが、日本よりも海外に出て勉強しようという意識が高いのは事実。現在ではアメリカに次いで中国が論文世界シェア2位となっているのも、当然と言えるのではないでしょうか」(フリージャーナリスト)

ノーベル賞を受賞するには研究の発表から25年かかるとも言われる中、このままでは日本人の受賞者はいなくなってしまうのかもしれない。

(小林洋三)

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