四国から「レトロ駅」が消滅する!? 将来は“アルミ製駅舎”だらけになる無策

 古い建物だと築100年以上経過している場合も珍しくない、鉄道の駅舎。なかでも四国は全国で2番目に古いとされる築135年の善通寺駅をはじめ、レトロ駅舎が多い地域。しかし、近年そんな状況に異変が生じているようだ。

 JR四国は築30年以上で、かつ耐震基準を満たしていない駅舎を対象に簡易駅舎にする方針を明らかにしている。23年度末の時点ですでに16駅が小さなアルミ製の駅舎に建て替えられており、7月には土讃線の讃岐財田駅(香川県三豊市)も新駅舎に生まれ変わる予定だ。

 小さいながらも待合室があり、バス停と比べれば立派でも駅舎と呼ぶには確かに簡素。もともと無人駅なので券売機がないのは同じだが、トイレは設置されておらず利用者の視点から見ればコンパクトでも少々不便だ。

「それは利便性の向上のためではなく、維持管理にかかるコストの削減を優先しているからです。簡易駅舎化は地元自治体との協議の上で進めていますが、対象の駅舎は約70駅。近い将来、四国の無人駅が同じ造りの簡易駅舎だらけになるかもしれません」(鉄道専門誌編集者)

 JR四国の西牧世博社長は、定例会見でこの件について「現行の規模で建て替えるというのはどの駅も基本的にはない」と明言。ちゃんとした駅舎を望むのであれば、自治体が費用を負担すればいいというスタンスだ。

「自治体が費用を負担して新しい駅舎を建てるのは全国的によくある話。決して無茶な要求ではありませんし、同社の厳しい財政事情を考えれば当然のことです」(同)

 それでもネット上の鉄道ファンからは《風情もクソもないな》《のどかな田舎に近未来的なアルミ製の駅舎って…》など不満の声が殺到。彼らの気持ちは理解できるが、そこに配慮する余裕すらないのだろう。

「昭和末期から平成初期にかけて、北海道を中心に次々と誕生した貨車改造型の駅舎についても当時の鉄道ファンから批判の声が上がりました。しかし、これと比べても四国のアルミ製駅舎はあまりに無機質。味気ないものに見えてしまうのだと思います」(同)

 駅舎好きの鉄道ファンは、今のうちに四国に行ったほうがいいかもしれない。

※写真はアルミ製簡易駅舎の牟岐線・立江駅(徳島県)。

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