ラグビーW杯を「100倍楽しむ」入門講座(3)「田村の頭脳」がカギ

 日本開催もさることながら、前回15年のワールドカップで優勝候補の南アフリカを破った金星で一躍脚光を浴びた日本代表。一部では、日本の快進撃の裏で外国人選手が多すぎるという主張もあるが、松尾氏は、その批判を一蹴する。

「なんで日本代表選手なのに外国人が多いの、と思っている人も多いと思います。現代のワールドカップはそもそも、試合のルール以外にもチームの編成について、いろんなルールがあるんですね。その中に『他国のチームで長くプレーしていれば、その国の代表になる権利が与えられる』と。簡単に言えばこういうことで、決して外国人選手たちは、助っ人で来ている人ではありません。例えば、キャプテンのリーチ・マイケルは、高校生の時からずっと日本でプレーをしていたから、今言ったルールをクリアして、日本代表として試合に出られているんです」

 いわば、ラグビーのルール自体も大きく変容しているのだ。そして代表選手の選考方法も大きく変わったことで現在の日本代表があると、松尾氏は断言する。

「昔は日本で優勝経験があるチームの監督が日本代表の監督となり、選手は優勝経験のあるチームから10人、他は関係者の推薦で15人くらいを決めていた。ただ、それだと、ちゃんとした選ばれ方ではないのではという声が上がってきた。そこで、全国から有名ではなくても、抜群の能力を持った選手をセレクターが徹底的に調査して、能力を見究める試合を何回もやってもらう。そこから選抜された選手たちが集まるわけだから、レベルも上がる。選手の選び方の基準が正確になってきているということも大きいと思います」

 では、「キーマン」は誰か。

「ラグビーでカギとなるのは、ポジションで言えば、ゲームそのものをコントロールするハーフバックとフルバックが欠かせない。背番号でいえば、9番・10番・15番の選手たちの突破力で、いかに試合を運ぶか。特にスタンドオフのポジションは、スクラムやモール、ラックなどの密集からボールが出てきた時に、最初にボールを受け取る役回り。『時間と得点差』『フィールド上のどこの位置で戦っているか』を常に意識しなければいけない司令塔の役割です。そんなスタンドオフのポジションである田村優選手はキックコントロールがいいので、すごく期待しています」(松尾氏)

 リーチ・マイケル主将も「天才」と称賛を惜しまない田村の頭脳が、チーム浮沈のポイントとなりそうだ。

「ラグビーはルールがどんどん変わっており、日本人向きではないスポーツになってきている。タックル偏重もその流れで、それでは、体型や骨格で劣る日本人はどう考えても不利ですよね。松島幸太朗選手だって、一般人から見たら大柄に思えますが、ラグビー選手としては、小さいほうですから。だから、とにかく小柄な体型を生かして『走り回る』『ボールをパスでつなぐ』『突破するのも正面からではなく、ボールをいかに外して相手を攪乱するか?』といった俊敏性のある試合展開を望みたい。それに、やっぱり立ち向かう心・勇気・団結力といった日本人の精神をラグビーに期待したいですよ」(松尾氏)

 いよいよ「決戦」だ!

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