去る8月10日の関連イベントで「必ず開催して成功させていきたい」と鼻息荒く宣言した吉村洋文大阪府知事。万博誘致の立役者だが、ちょっと待て。膨れ上がる建設費に運営費‥‥結局尻ぬぐいをするのは開催国ニッポン国民の税金だ。日本経済の「地盤沈下」を招く戦慄シナリオを緊急シミュレート!
2025年4月13日から半年間にわたって人工島・夢洲(ゆめしま)で開催される大阪・関西万博(以下、大阪万博)。開幕までおよそ1年半に迫るというのに、現地はシラけたムードが漂っている。そればかりか、準備の遅れが相次いで報じられ、市民の間でもこんな不安が広がりつつあるのだ。
「史上最低の万博にならないか心配だ」
大阪万博の参加国は153の国と地域で、みずから費用を負担してパビリオンを建設する「タイプA」を希望する参加国は50カ国前後。だが、その中で基本計画書を提出した国は韓国とチェコの2カ国のみだ。在阪メディアの記者もこう苦言を呈す。
「パビリオンの建設には、大阪市に仮設建築物の許可申請が必要です。韓国が申請の前段階となる基本計画書を7月末に提出。次いでチェコが8月中旬に提出しました。ただし、計画書を提出した一番手の韓国でさえも、工事の完了予定は24年11月。当初の予定より4カ月も遅れているのです。開幕後も施工を続けるパビリオンはこれまでの万博でも普通にありましたが、それを考慮しても出足が鈍すぎる‥‥」
さらに、東京五輪のように開催経費は、膨らんでいくばかり。1200億円と予定していた会場建設費は、現在の試算で約1850億円に達する見通しで、夢洲の地盤問題もあり、さらなる増額を予想する専門家もいる。ちなみに建設費は国庫、大阪府・市、そして民間資金が同額を負担。つまり、3分の2にあたる約1234億円もの税金が投入されることになる。
「資材や人件費の高騰に加えて、今は円安も進行していて、インフレが加速しています。さらに『2024年問題』で、年間の残業は原則として360時間が上限となった。ただでさえ、建設業界は人手不足なのに、労働時間の短縮も考慮する必要がある。万博を運営する日本国際博覧会協会も2024年問題には頭を悩ませ、『施設整備に従事する建設作業員などを残業規制から除外して欲しい』と政府に要請したのです」(在阪メディアの記者)
残業規制の緩和には世間の強い反発が予想されるため、特例扱いはしにくい状況にある。
かつて「人手が足りない」となると、労働者の街・西成で多くの働き手を確保。不安定かつ短期の建設現場では西成の住民が重宝されたが、それも昔の話だ。
「正直、西成で人材を確保する下請けはほとんどありません。高齢化が進んで、戦力として見てないのです。言葉は悪いけど、人数合わせの要員で、力仕事も無理。建設現場では掃除ぐらいしか任せられません」(手配師)
10年ほど前から西成は福祉の町に様変わり。労働者の供給源としての役割はすでに終えている。
一方、21年10月、当初の予定より1年遅れで開幕した「2020年ドバイ万博」は、外国から出稼ぎ労働者をかき集めて、なんとか開催にこぎつけたが、この円安ではそれもかないそうにない。