さる7月29日には東京・隅田川の花火大会が4年ぶりに復活した。もともと100万人規模で人が集まる国内最大級の夏祭りだったが、今年はコロナ禍でたまったうっぷんを晴らすかのように、過去最大の103万人が集まった。同じように、今年はコロナ禍で中止に追いやられていた各地の夏祭りが次々に復活している。
とはいえ、それでも中止になった花火大会は少なくない。
「例えば千葉県鴨川の花火大会は、コロナ禍でも続いていたにもかかわらず、今年は中止になりました。同じ千葉県では御宿の花火大会が20年から中止になっていて、今年も中止です。全国では50以上の花火大会が中止もしくは中止を発表しています」(経済ジャーナリスト)
中止になる主な理由は、スタッフ不足や財政的に依存していた寄付金が集まらないことなどがある。背景には地域経済の悪化や物価高があるといわれるが、コロナ禍でいったん人と金が離れてしまうと、戻すのは容易ではないという。
「当然ながら、花火業界はこうした悪影響をモロに受けています。コロナ禍では休業を強いられ、何とか助成金で会社は維持したものの、いざ復活しても原材料の高騰や一度離れた人材が戻らず、存続の危機にあるのです」(前出・ジャーナリスト)
こうした厳しい現実に活路を見出そうと関係者は必死だが、その対策の1つとして実行されたのが「有料化」だ。帝国データバンクの調べによれば、今夏の主要な106の花火大会のうち、約7割の77大会が生き残りを賭け「有料席」を新たに設けている。有料席の新設は5大会で、もともと有料席を設けていた大会の中には、「全席指定の有料化」や値上げに踏み切ったところもある。
また、花火大会ほど人手やコストはかからないものの、事情は夏祭りも同様だ。今年も中止というものもあれば、コロナ禍を機に廃止された祭りもある。だがその一方、有料化で大成功している例もあるという。
「8月2〜7日に青森市で開催されたねぶた祭がそれです。ねぶた祭は、昨年から100万円のプレミア席を設けました。1日6組限定で、1席最大8人が利用可能。豪華弁当に飲み放題というもので、今年も昨年同様、すぐに売り切れたそうです。また、徳島県の阿波踊りは8月11〜15日の開催で、コロナ前は5000円の特別席を設けていましたが、今年は1万5000円のVIP席に加え、20万円のプレミア席も設置しましたね」(前出・ジャーナリスト)
地域に根付いた花火大会や夏祭りが曲がり角を迎えている今、各自治体や主催者の様々な工夫やアイディアが試されているようだ。
(猫間滋)