「打者のためのルール改定」まで飛び出して…プロ野球「投高打低」の深刻内幕

 今年も「投高打低」のようだ。去る4月13日の西武対ロッテ戦で、西武・今井達也による「ノーヒットノーラン達成まであと5人」という投手ショーが繰り広げられた。

 快投を見せているのは今井だけではない。前日には阪神・村上頌樹が「完全試合達成まで残り2イニング」でマウンドを譲っていた。14日のオリックス戦でも、ロッテ・佐々木朗希が「5イニングまで完全試合」「6回2打者目までノーヒットノーラン」状態だった。3夜連続で記録達成の緊張感が漂う投手のワンマンショー。昨季も、4人の投手がノーヒットノーラン(うち一人は完全試合)を達成しており、「投高打低」はしばらく続きそうである。

「低反発球が定着したせいもありますが、投手の練習内容が理論づけられ、かつ、その投手の成長とレベルアップに打撃陣がついていけない状況なのです。昨季のヤクルト・村上宗隆のように、打者の全てがまるで手が出ない、というわけではないんですが…」(ベテラン記者)

 また、スコアラーたちの言葉を借りれば、「縦の変化球」が多くなってきたせいもあるという。曲がり幅やその角度、ボールの回転数が10年前とは比較にならないほどアップしているそうだ。こうなると、打撃陣の対策は不可欠だが、こんな見方もあるようだ。

「日本でもワンポイントリリーフが禁止になるかもしれません」(球界関係者)

 メジャーリーグでは、今季からいくつかの新ルールを導入している。その1つが、「打者1人で交代するワンポイントリリーフ」がNGとなり、登板したら最低でも「打者3人」と対戦するか、イニングを終わらせなければならないというルールだ。

「MLBがワンポイントリリーフを禁止した理由はいくつかあります。まずは試合時間の短縮。それと、契約更改で登板数による出来高を求めてくる代理人も多いので、『ワンポイントで1試合分を払いたくない』と考えるオーナーもいます。加えて『投高打低の傾向』を変えられるかもしれないとの期待もあったんです」(米国人ライター)

 MLBは「ホームランが最大の魅力」と捉えている。投手たちのレベルアップも歓迎しているが、「先発、中継ぎ、クローザー」の投手分業制が完全定着し、変化球の質が違う各投手との対戦だけでも大変なのに、ここにワンポイントの投手が加わったら、打者の成績はさらに悪化する。つまり、ルールを改定することで、打者に助け船を出したのである。

 もっとも、ノーヒットノーランや完全試合は先発投手の記録であり、リリーバーのルール改定とは別の話だ。とはいえ、このまま投高打低が続くようであれば、日本でも「打者のためのルール改定」に向けて動き出すかもしれない。

(飯山満/スポーツライター)

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