08年に日本ハムファイターズに入団し、栗山英樹監督(61)のもとで日本一を経験した杉谷拳士氏(32)。指揮官を間近で見てきた愛弟子が、「栗山采配」とWBCの展望を熱く語った。
現役時代の守備よろしく、フットワーク軽く日米のキャンプ地を飛び回る杉谷氏。まずは引退後の仕事ぶりについて聞くと、
「取材される側から取材をする立場になって、まだまだ慣れないところも多いですね。自分が現役時代にそうだったように、選手も人なので、感情の浮き沈みがありますから。雰囲気を見て、ひとつひとつ言葉を選んで質問するようにしています」
そんな杉谷氏の恩師が日本代表の栗山監督だ。日ハム就任1年目の12年にペナントを制し、その年のCSファイナルステージではソフトバンクに3連勝するなど、短期決戦での勝負強さを見せつけた。
「16年のCSは個人的にもよく覚えています。レギュラーシーズンが終わって、体の調子がグングン上向いてきて、いい準備ができていたんです。それでも出場機会に恵まれなかったのですが、3勝2敗と王手をかけた第5戦、大事な一戦で栗山監督から『行くぞ!』と声をかけられてスタメン起用。内心、『すごい勝負に出るな』と思ったのですが(笑)、4点差をひっくり返してCSを突破。自分もヒットを打って勝利に貢献できました」
その後の日本シリーズでは広島に2連敗から4連勝して、みごと日本一に輝いたことは印象深い。今回のWBCでは当然ながら世界一を狙うが、
「選手の調子をしっかりと見極め、時にはセオリーに囚われない采配を振るのが特徴。今回のWBCでは、継投や抑えが鍵になりそうですが、『え? ここでこの選手を?』と驚かせることがあるかもしれません。でもそれは奇策ではなく、現場でいちばんいいと判断された選手。ファンの方には、それがベストの選択だと信じて見守ってほしいですし、代表メンバーを見渡しても、どんな状況でも柔軟に対応できる選手がそろっていると思います」
栗山采配を支えるのが首脳陣だ。7人のコーチのうち、白井一幸氏、吉井理人氏ら5人が日ハムでのコーチ経験を持つ。
「首脳陣全体を見ても心強いですよね。私が注目したのは、ブルペンキャッチャーとして日ハムで計6年間ともにプレーした鶴岡慎也さん(41)を起用したこと。メンバー30人のうち15人を投手に充てていることもあって、中継ぎ投手陣が非常に重要になってくる。鶴岡さんがブルペンにいることで、投手陣との情報交換もスムーズにいくのではないかと思っています」
今回、メジャーリーガーをはじめ「史上最強」のメンバーが栗山マジックでどんな化学反応を見せるのか。
「栗山監督の『人を思う力』というのはすごい。常に選手のことを見ていますし、どんな場面でも『信じてる』『信頼している』と背中を押してくれる。『よし、やっちゃうぞ!』って気持ちにさせてくれるんです」
06年のWBCの第2ラウンド、日本・アメリカ戦では「世紀の大誤審」をめぐって王貞治監督がベンチを出て猛抗議する一幕があったが‥‥。
「栗山監督も滅多に怒りませんし、抗議するにしても、審判に対してというよりも、選手のことを第一に思ってのこと。でも不測の事態が起きたら、栗山監督だって黙ってないと思います。日米で活躍する一流の選手が、栗山采配でどんな輝きを放つのか、ファンとして楽しみです。どこの国が相手でも、目の前の1試合1試合に集中して勝利を積み重ねてほしいですね」
栗山ジャパンの初陣に熱い期待が集まる。