「J2初代MVP」小川航基が完全復活 「J1得点王」へ名乗り!

 Jリーグは2節を終えて、連覇を目指す横浜F・マリノスが2連勝と好スタートを切り、浦和レッズは2連敗で最下位という結果に。そんな中、注目してほしい選手がいる。横浜FCの小川航基だ。

 初めて見たのは彼が高校3年(桐光学園)の高校サッカー選手権(15年)。2試合連続2ゴールの計4ゴールを決めた。一躍、東京五輪のエースストライカー候補として注目を集めるようになった。

 186㎝の長身を生かしたヘディングシュート。豪快なシュート。そしてゴール前であきらめない泥臭いシュートと、まるでゴールを決めるために生まれて来たような選手だった。

 高校卒業後は磐田に入団。2016年のU-19アジア選手権では3ゴールを決め、日本の初優勝に貢献。

 だが、翌2017年のU-20W杯が大きな分岐点となった。日本のエースとして期待され、初戦の南アフリカ戦でもゴールを決めている。しかし、2戦目のウルグアイ戦、開始16分でひざを負傷し交代。左ひざ前十字靭帯断裂と半月板損傷と診断され帰国。

 その後は、どこからでも点が取れる決定力が鳴りを潜め、磐田でもポジションを奪うのに苦労していた。

 U-20W杯をともに戦った仲間の中には、堂安律、久保建英、板倉滉、冨安健洋、中山雄太ら、東京五輪代表、日本代表へと上り詰めた選手が多く、完全に差をつけられていた。

 そんな小川が昨季、6シーズン所属していた磐田から、故郷にある横浜FC(当時J2)に移籍した。2021年12月には結婚もして長女も誕生した。環境を変え守るものが増えたことも、小川を大きく変えることに繋がったのだろう。

 昨季のJ2、いきなり開幕10試合で10ゴール。終わってみれば26得点で得点王に輝き、チームのJ2優勝に貢献。また昨季から設けられた初代MVPにも選出され、ベストイレブンとあわせ、タイトルというタイトルをすべて手に入れてJ1に戻ってきた。

 大きなケガをして、その後も結果を出せないと、そのまま消えてしまう選手が多い中、復活の兆しをみせた。その理由は小川のハングリー精神だ。俺はもっとやれる。もっと点が取れる。このまま終わる選手じゃない。そして同世代のメンバーと、もう一度、代表で一緒にプレーしたい。そういう気持ちが強かったから、ここまで復活してきたのではないか。

 もちろん、いきなり得点王を獲得するのは難しい。それでも、どこまでゴールを重ねていくのか。今から楽しみだ。
 
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。

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