先月30日、北海道の深川〜留萌間を結ぶ「JR留萌本線」の廃止について沿線自治体が会議で合意。これを受けてJR北海道は9日、石狩沼田〜留萌間の鉄道事業廃止届を国土交通大臣に提出したことを明らかにした。
16年には留萌〜増毛間を廃止していたが利用客の減少に歯止めがかからず、21年度の営業係数(※100円の運賃収入を得るためにかかる経費)は2183円。廃止協議中のJR根室本線・富良野〜新得間に次いで道内ワースト2位の超赤字路線で、廃止合意後の31日には鈴木直道北海道知事が「その判断がいかに重いものであるかということを深く受け止めている」と次々と鉄道が姿を消す北海道の行政トップとしての苦しい胸の内を語っている。
ちなみに廃止予定日は来年9月30日だったがJR北海道は4月1日に繰り上げする意向を示しており、認められる可能性が高い。一方、残りの留萌〜石狩沼田間も26年3月での廃止がすでに合意されている。
もはや廃止は避けられない状況だが、沿線には鉄道ファンに人気の昔ながらのレトロ駅舎も多い。なかでも「恵比島駅」(沼田町)は、99年放送の遠野なぎこ主演のNHK朝ドラ「すずらん」の舞台となった場所。作品内では「明日萌(あしもい)駅」となっているがこの駅名の駅標板が残されており、今も聖地巡礼のファンが訪れる地元の観光名所として有名だ。
「もともと北海道によくある古い貨車を転用した駅舎で、今も使用されていますがドラマを撮影するにあたって物語の舞台となった昭和初期の駅舎を復元したんです。放送終了後もそのまま残されていますが、来年の鉄道廃止後にどうなるかは現時点では未定です」(地元紙記者)
一部の大きな駅などを除き、廃止になった駅舎は取り壊されるケースがほとんど。朝ドラの舞台であることはもちろん、鉄道文化財としても貴重なだけに保存してほしいところだが…。
(高島昌俊)