熊本・上天草市に「ワーケーション」施設が10月誕生!他に類を見ない利点とは?

 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除され、旅行などが少しずつだが許される雰囲気になってきた2022年。この2〜3年壊滅的だった観光業界や地方自治体は、新たな試みに取り組み始めている。それは「ワーケーション」。「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた、新たな働き方の提案だ。

 テレワークが浸透した今、場所にとらわれない柔軟な働き方が可能となり、ノートパソコンさえあれば、デスクワークも会議もどこにいたって可能。そもそも会社自体を都心のオフィスから撤退させたところさえある。オフィスワーカーは家と会社の日々の往復から解放され、自宅はもちろん、山や海、温泉地などでリラックスしながら働く人も徐々に増えている。

 企業にとっては仕事の質の向上やイノベーションの創出、人材漏出の抑止が期待でき、受け入れ先の地方にとっては遊休施設等の有効活用や雇用創出などが望めるなど、ワーケーションにおけるメリットは大きい。だからこそ、国土交通省・観光庁でも積極的にワーケーションを推し進めている。

 ほとんどの地方が自治体を中心にワーケーション誘致を進める中、自治体主導ではなく、一民間企業が仕掛けようとしているところがある。それは熊本県・上天草市にある「藍の村観光株式会社」。土産物店やリゾート複合施設を経営する会社が、海沿いの土地にワーケーション施設を建設中で、2022年10月に第一期オープンの予定だ。

 熊本空港から車で約1時間半の場所にある上天草市は120あまりの島から構成され、市のほとんどが雲仙天草国立公園に含まれている。そのため、観光産業が市の産業基盤の一つだが、コロナにより大打撃を受けた。平日は団体旅行、週末や夏休みなどは一般観光客という見込みがあったが、コロナ以降人が来なくなった上に営業もできない。

 そこで注目したのがワーケーションだ。あらゆるビジネスパーソンを誘致できる上、平日にも人の流れが見込める。地域の潜在的な課題が解決できることから、積極的に取り組むことを決意したのだ。

 上天草市がワーケーションを成功させるにはいくつかの勝算がある。まず、中心地から離れているので、大手資本がやってきて荒らす可能性がほぼない。そして横の強いつながり。同業者はライバルではなく仲間として情報を共有。市役所・市議とも連携が強く、官民一体となって問題に取り組める。ワーケーションを想定して、通信環境の整備なども一歩進んだ。

 さらに、上天草市は海に囲まれた島々ながら、天草五橋で九州本土とつながっている。沖縄や石垣、奄美といった島の場合、緊急時に飛行機が飛ばないなどの事態が起こりうるが、上天草なら車で熊本駅に出れば新幹線がある。リスクマネジメントの意味でもワーケーションに適した場所といえるのだ。

 現在建設中の「上天草市大手原ワーケーション施設(仮称)」は、宿泊コテージに、レストラン、ショップ、シェアオフィス、会議室、セミナー室、サウナなどを備えた管理棟を併設、2023年にグランドオープン予定となっている。

 藍の村観光株式会社の代表取締役・藤川護章氏は語る。

「シェアオフィスなどの他に、ヨガ、瞑想室、そして何もしない空間も作る予定です。現代社会で、知らず知らずに心や体に溜まった不調をデトックスできる、心身を整えるような場所にしたい。さらに、地域の抱えている課題や経済的なことを含め持続化できる、経済的にも精神的にもみんなが豊かになる街づくりを目指していきたいと考えています」

(いしざわりかこ)

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