ANAホールディングス(HD)が15日、トヨタ自動車などが出資する米新興企業「ジョビー・アビエーション」と業務提携し、同社が開発する電動式の垂直離着陸機、いわゆる「空飛ぶクルマ」の運航事業に参入することを正式発表した。
同社によれば、ジョビーが開発している機体は5人乗りで、最高速度は時速約320キロ。最大航行距離は約240キロメートル強としている。
「経済産業省による『空飛ぶクルマ』の定義は、電動であり、自動運転であり、さらに垂直離着陸ができる機体。滑走路や化石燃料を使わないため、まさに未来の移動手段として注目を集めています。トヨタは傘下のベンチャーキャピタルを通じてジョビー社に資本参加、20年に約4億ドル(約460億円)を出資しています。現在、国内外では空飛ぶクルマの実現に向け400近いプロジェクトが走っていますが、実際に試験飛行にこぎつけているのはまだ数えるほど。このプロジェクトが整備されれば、現在は自動車で約1時間かかる関西国際空港から大阪駅までの移動がわずか15分に短縮できるといいます」(全国紙記者)
報道によれば、両社は2025年に開催予定の大阪万博を見据え、その前年に商用化を目指しているというが、安全面や運航のルールづくりまで課題は多い。
「運転にせよ、操縦にせよ、免許はどうなるのか。あるいは飛ぶ高さは等々、管制面での問題もあります。またクルマである以上、事故が起きた際の保険を設けたり、それに伴う法整備も必要になります。両社では運航に加え、インフラ整備やパイロット養成、航空管制などの面で協力し24年の実用化を目指すとしていますが、あと2年でこれらの課題をクリアできるのか。経産省、国交省をはじめ、霞が関や自治体全体で後押しする必要もあるでしょう」(同)
ちなみに、トヨタは乗降場所までの地上送迎サービスを担うとしているが、それを考えても利用料金はかなりお高くなりそうだ。だが、道路渋滞のほかにも過疎地の輸送など、さまざまな交通課題を解決できるとして大いに期待されている。
(灯倫太郎)
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