“3度目の先発テスト”は温情ではない。阪神・藤浪晋太郎投手が8月9日の東北楽天戦に先発した。後半戦のローテーション再編を口にしていた矢野燿大監督は、藤浪、及川らにエキシビションマッチでそのチャンスを与えてきた。
「西勇輝、秋山拓巳、青柳晃洋、ガンケルがいます。前半戦の終盤、チームが失速したのは事実ですが、無理に先発陣を入れ換えなくても…」(在阪記者)
しかし、デンと構えてはいられなくなったのだ。2位巨人とゲーム差が縮まったせいもあるが、理由はそれだけではない。東京五輪を経て、マイナス要素が加わったからだ。
「青柳が心配です。青柳はチームの先発勝ち頭ではありましたが(同時点)、侍ジャパンでは良いところを見せられませんでした」(前出・同)
不慣れな中継ぎ役で登板させたことを稲葉篤紀代表監督も詫びていたが、五輪野球で青柳が打ち込まれたことを“予言”する声も出ていたという。
「何人かのプロ野球解説者が『アブナイ』と言っていました。右バッターの外に逃げるスライダーが前半戦好調の一因でした。でも、外国人バッターはリーチが長いから届く、自信喪失となって帰って来ることにならなければいいが…と話していました」(球界関係者)
聞くところによると、稲葉代表監督に青柳の侍ジャパン入りを猛プッシュしたのは、矢野監督。おそらく、変則右腕の利点を力説したのだろうが、五輪が終わって稲葉代表監督の口から出たのは、青柳の気配りなど人柄の良さを伝えるもの。選手のフォローを忘れない稲葉代表監督も立派だが、「自信喪失」なんてことにならないだろうか。
「後半戦最初のカードとなる広島戦ですが、西勇輝と秋山の登板は決まっています。青柳を起用するとしたら、次節のDeNA3連戦が濃厚ですが、代表メンバーは心身ともに疲れています。『一度ローテーションを外して休ませてやりたい。スライダーが国際試合で通用しなかったことも忘れさせて』と思っているはず」(前出・在阪記者)
そうなると、藤浪と同じく先発テストを受けた及川雅貴の抜てきは間違いない。ガンケルを加えたとしても、しかし、あと一人足らない。藤浪は9日のテスト結果に関わらず、先発で使わなければならないようだ。
ペナントレース後半戦のカギは藤浪が握っていると言っても過言ではない。
(スポーツライター・飯山満)