開幕1カ月前になっても観客の有無が取り沙汰されるなど、なし崩しでの開催が見込まれる東京五輪。それでも海外から選手団が続々と来日し、これら変異株の脅威はもはや対岸の火事ではなくなっている。
「先に2人のコロナ感染が確認されたウガンダ選手もこのデルタ株だったことが判明しました。その後、政府はデルタ株が流行しているインド、スリランカ、ネパールなど6カ国からの選手に対し、出国96時間以内に2度の検査、入国時に1回、さらに入国後は毎日検査を義務付けるなど、検査体制を強化しています」(社会部記者)
こうして眼光をより強めても、検疫すり抜けは起こると、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は指摘する。
「日本の検疫の問題は、PCRに比べ精度が低い抗原検査を使っていることです。発熱や咳などの症状のある場合に差はないが、無症状の場合にはすり抜けが起こりやすい。特にオリンピックに参加する屈強なアスリートの多くは無症状の場合が多く、その半数は見逃されることになる」
ザル検疫で致命的なエラーとならなければいいが……。
国際ジャーナリストの山田敏弘氏は、別の角度から東京五輪の危険性を訴える。
「6月11~13日、イギリスで開催されたG7(主要7カ国首脳会議)では、開催地となったコーンウォールで感染者が爆発しています。もちろん政府は、関係者からの感染を否定していますが、人流によって感染が拡大したことは否めません。サッカー会場でのサポーターの爆発的感染などの例を見ても、大規模なスポーツイベントで変異株による感染拡大が起こらないと考えるほうが難しい。政府は東京五輪にも変異株は必ず流入するものとみて対策を進めるべきです」
新型コロナの水際対策では、いまだ目覚ましい成果を発揮していない政府に過度な期待は望めない。残るは、ワクチンだけが頼みの綱となるが、
「デルタ株に関してはまだ臨床データが十分にそろっていないものの、基礎研究のデータでは現在のワクチンも有効だと言われています。ただし、アルファ株などより効果が少ないとみられます。というのも、すでに国民の6割がワクチンを接種済みのイスラエルでも再びこのデルタ株が増え、政府はマスク着用を推奨しているのです」(上氏)
「国民の命と健康を守り、安全、安心な大会が実現」と政府は謳うが、次々に襲いかかる変異株により、すでに国民の心が決壊寸前まで追い詰められているのだ。
*「週刊アサヒ芸能」7月15日号より