ロシアの通信社「スプートニク」が、2021年のノーベル平和賞の候補者リストに、プーチン大統領が加えられたと報じたのは5月14日のこと。報道によれば、プーチン氏を推薦したのはセルゲイ・コムコフ氏というロシアの有名作家で、推薦状はすでに昨年9月、同委員会に発送済みなのだという。国際問題に詳しいジャーナリストが語る。
「実はプーチン氏がノーベル平和賞に推薦されるのは、2014年に次いで今回で2度目。1度目に推薦したのは『世界市民の精神結束・連携国際アカデミー』という平和運動を行っているロシアの反戦団体で、彼らはノーベル平和賞を受賞しながら、シリアを攻撃すると威圧したオバマ元米大統領を非難。一方、プーチン氏はシリアに自発的な化学兵器の廃棄を求め、交渉によって武力行使を防いだとして、非軍事的解決策の仲介に努力したことを高く評価、それが推薦理由だとしていました。とはいえ、ウクライナ問題をはじめ、ロシアと欧米との対立が激化。消息筋の話では、前回はかなり早い段階で平和賞の候補から外させていた、と噂されていました」
ノーベル平和賞は、平和の促進や軍縮などに貢献した個人や団体に贈られる賞だが、近年は、人権の擁護や民主化への貢献も、その授賞理由になっている。
「ノーベル賞のうち、科学や医学、経済学賞などの候補者は専門の学術機関から募集されますが、平和賞は、『資格のある推薦者』からの推薦であれば全て受理されることになっています。推薦者は一国の政府でも、政策研究所や社会科学の教授でもOK。ただし、自薦はできません。また、ほかの5つの賞はスウェーデンの団体により選考されますが、平和賞だけは、ノルウェーの議会が任命した5人の元議員でつくる『ノーベル賞委員会』が選ぶことになり、委員会が候補者リストを40人から25人に絞り込み、10人前後が最終候補になると言われています」(前出のジャーナリスト)
プーチン氏を推薦したコムコフ氏によれば、現在の候補者数は全部で286人。もちろん、プーチン氏がどの段階までリストに名を残すかは未知数だが、報道を受け、SNS上では、《ゴルバチョフは納得だったが、プーチンのどの政策が評価に値するんだろ?》《イグノーベル賞の間違いじゃないか?》《あのゴチャゴチャなロシアを国としてまとめている手腕は大したものだが、平和は関係ないんじゃない》といった声も多く、なかには《えっ、プーチンがノーベル平和賞?ありえないな……トランプのほうがマシじゃない?》といったコメントも。
ちなみにノーベル平和賞は、過去に「平和の促進や軍縮などに貢献した」だけでなく、「現在進行形の事柄に関わる人物や団体」も受賞の対象となる。つまり、その活動が将来にわたって実を結び、目標が達成されることに期待して、それを励ます意味も込めて、賞が与えられるケースもあるのだという。
ロシアで唯一この賞を受賞したのは、旧ソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領ただ一人だが、はたして、プーチン氏がゴルバチョフ氏になる時はやってくるのか。
(灯倫太郎)