危険な潜入ルポを得意とするライター兼イラストレーターの村田らむ氏が向かったのは京都。悪縁を断ち切りたいという参拝者が殺到する“縁切り神社”で見たものとは?
緊急事態宣言で京都の繁華街もシャッターが閉まり、すっかりひと気がなくなっている。だがそんな閑散をよそに、ひっそりと人が集まる神社がある。安井金比羅宮だ。
安井金比羅宮に祀られているのは、「日本三大怨霊」の一人に数えられる崇徳天皇だ。彼は、弟である後白河天皇と家督を争って隠岐諸島に島流しになり、弟を呪ったまま髪も爪も伸びっぱなしのひどい形相で亡くなった。
崇徳天皇の死後、京都では大きな事件が起きたり、後白河天皇の縁者が相次いで死んだ。それは崇徳天皇の祟りだと噂された。
現在、安井金比羅宮は、縁切り神社として知られている。
境内に置かれた、くぐると悪縁を切ると言われる碑(いし)には、おびただしい数の願い事が書かれた神札が貼られている。願い事の多くは縁切りだ。
関西に住んでいる女性編集者に、この神社の話題を振ったら、
「私も離婚の時にお参りして御札貼りました!! おかげで円満離婚できました!!」
と話してくれた。やはり効き目抜群のようだ。そして境内には絵馬も大量にかけられている。もちろん書かれている願い事の多くは“縁切り”についてだ。
《コロナウイルスで苦しむ人達が一人でもいなくなりますように》
などという殊勝な縁切り祈願もあるが、多くの絵馬にはとても辛辣な呪いの言葉が綴られている。
《京都の●●●●死 不幸になれ 死! 死! お前!》
《●●●●と●●●が早く離婚しますように! 幸せになりませんように!!!》
《長男が盗み撮りをするような悪癖を切って毎日まじめに生活をするように》
《パパが●●ちゃんと二度と会いませんように》
《私を捨てた人に不幸なことが沢山おこり、私が人生のトップとなり、必ず見返す。誰よりも昇りつめて強くなる》
などなど、様々な縁切りの願いが書かれている。中には読み取れないほど小さい文字でギッチリ書かれた絵馬もあった。
女子大生が同級生の女性に対して、《全員に嫌われて日本に住めなくなりますように。SNSもすべて凍結されますように》という願いを書いていたが、900年近く昔に亡くなった崇徳天皇にSNSのことを頼むのはどうだろう? と思った。
この神社を訪れた人は、縁を切りたい憎い人への“怨念”を具体的に絵馬に書き出すことで、ストレスを吐き出しているのかもしれない。
それこそSNSに書いたら、炎上したり、アカウントが凍結されたり、大変なことになりがちだが、神社の絵馬なら大丈夫だ。
あなたもストレスが爆発しそうになったら、安井金比羅宮を訪れてはいかがだろうか?
(写真・文/村田らむ)