世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「打者が苦しむ球速2キロの差」

 盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!

 福本豊、このたび73歳でYouTubeデビューしました。一緒に仕事したことのある若い子がテレビ局を辞めて、YouTube制作用の会社を作った。「福本さんと一緒にYouTubeやりたいんです」と言うてきたので「いいよ」と。コロナ禍で出歩くこともないし、家にいててもおもしろいテレビ番組も少ない。暇つぶしといったら語弊があるけど、断る理由がなかった。1月から「福本豊チャンネル」を開設して、好き勝手にしゃべらせてもらってます。周りの人からも「YouTube見ましたで」とよく声をかけられる。僕と同じで、家にいてもやることがない人が多いんやろう。野球ファンに喜んでもらえるならナンボでも話すし、少しでも娯楽を提供できればいいなという思い。今後は楽しんでもらえるだけでなく、高校球児らが見て勉強になるものも作っていきたい。僕にとってはインスタグラムに続いての挑戦。何歳になっても、新しいことにトライするチャレンジ精神を大切にしたい。

 挑戦という意味では、巨人・菅野は残念な結果になった。ポスティングでのメジャー挑戦を目指していたけど、巨人残留が決まった。米球界もコロナ禍で球団経営が厳しいと聞く。菅野が求めるだけの条件を出した球団がなかったんやろね。

 個人的には日本球界のエースがどれだけの成績を残すか見たかった。31歳という年齢を考えると、今が山の頂点で、下り坂にさしかかってもおかしくないところ。今年、投げていれば間違いなく結果を残していたはず。巨人との契約は1年ごとに米球界行きの選択もできるみたいやけど、行くのならまっすぐの力があるうちに行ってほしい。プロの打者は恐ろしいもので、例えば平均球速が2キロ遅くなるだけで、簡単に打ち返すようになる。スタミナがない投手が中盤以降につかまるのはそのためや。どれだけ変化球が曲がろうが、まっすぐの力が落ちるとプロの打者は抑えられない。

 逆に言うと、平均球速が2キロ速くなっただけで打者は打てなくなる。日本人野手がメジャーで苦しむ理由のひとつで、昨年も筒香、秋山と、日本で実績を残した2人がさっぱりやった。ワリを食ったのが、日本ハムの西川。ポスティング申請をしたが契約が成立しなかった。スピードを生かすタイプの打者は、パワーで苦労すると思われてしまっている。周東に続く42盗塁をマークした脚力があっても、塁に出なければ持ち腐れになってしまう。そう考えると、あらためて、メジャーでも盗塁王になったイチローのすごさが際立つ。

 話を菅野に戻せば、巨人にとっては、これ以上の補強はない。投手の柱として期待できるのが戸郷ぐらいしかいなかったので、大ピンチやった。菅野は調子が悪い時もなんとかするし、確実に貯金が計算できる投手やからね。エースの残留でリーグ3連覇の可能性が出てきた。

 今年は阪神が久々の優勝チャンスとみていたけど、これでちょっとわからん感じやな。巨人は打者でもスモーク、テームズと大リーグでシーズン30本塁打以上の経験がある2人を獲得した。実績どおりに働けば、すごい打線になる。DeNAから梶谷も加わり、丸、坂本、岡本の3人に外国人2人。大城も打てる捕手やし、多少投手陣が悪かろうが、打ち勝つ野球ができる。阪神にとっては今年も高い壁になるかもしれんね。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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