1月2日に会食をともにした仕事仲間の新型コロナへの感染が発覚。執筆業を生業としている筆者のもとに保健所から連絡が入ったのはそれから3日後のことだった。“濃厚接触者”として自宅隔離を要請された筆者だが、その知らせを受けたのは自宅ではなく、別に借りている個人事務所だった。まず頭を悩ませたのが、自宅に帰るか否かだ。保健所からは帰宅を促されたものの、我が家は部屋数の少ない賃貸マンション。二階建ての一軒家ならまだしも、筆者の居住環境では家庭内感染の対策を十分にとれないことが容易に想像できた。自宅には幼い子どもがおり、ガイドラインと我が家の状況を照らし合わせてみても、高い精度で実施するのは難しい。
寝袋を購入して事務所で過ごす、人と接することなくビジネスホテルで連泊する……などよい方法を模索したものの、最終的には妻と相談の上、帰宅することにした。濃厚接触からその知らせを受けるまでの丸2日間、すでに家族と生活をしており、筆者が感染していればすでに家庭内感染を引き起こしている可能性があること、逆に感染していない可能性も十分にあり、これらを考慮して判断した形だ。この判断が正しかったかどうかはわからないが、かくして筆者の自宅隔離生活ははじまった。
具体的な対策については、厚生労働省からリリースされている「ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合 家庭内でご注意いただきたいこと〜8つのポイント〜」を参考にした。無症状であったため筆者の感覚としては健康そのものなのだが、日頃担当している家事や育児を妻に任せきりにせざるを得ないことが非常に申し訳なかった。子育て世代の夫婦いずれかが濃厚接触者となった場合、ワンオペ状態になることは必至だ。
また、本来であれば7日から子どもが通うはずであった幼稚園も休ませざるを得なかった。保健所の見解では「濃厚接触者の家族」については何も制限がないとのことだが、改めて質問をしてみると、実質的には学校や園の判断で登校・園を控えるケースが非常に多いとのこと。幼稚園の担当者と相談してみても、やはりPCR検査の結果が陰性とわかるまでは登園を控えるよう指示があり、これに従う形となった。
日に日に増える感染者数の数に戦々恐々としながらも、過ぎていく毎日。年末年始の会食で感染、もしくは濃厚接触者となり、家庭内感染が増えているという報道がなされていることから、筆者と同様の状況に置かれている方が一定数いることが推測される。
筆者が濃厚接触者に認定され、保健所から連絡をもらったのは1月5日。検査の実施日は6日後の11日を指定されていた。検査はドライブスルー形式が取られており、マイカーを持たない筆者には自治体が送迎の車を手配してくれるという話だった。
検査の2日前にあたる9日夕方、保健所から検査当日の詳細について電話連絡があった。本人確認の上、当日の待ち合わせ場所や送迎車種、持参する本人確認書類などについて案内があり、混乱を避けるため検査場所については口外しないよう注意があった。車はそれとわからないようノーマルな外観で、車両内部は仕切りを設けるなど感染症対策が施されているらしい。駅のロータリーから少し離れた位置が待ち合わせ場所に指定されたほか、乗車する前に担当者から携帯電話に本人確認の連絡が入るなど、当たり前だが厳重な対策がされているという印象を受けた。
濃厚接触者となってから5日後の10日、会食に同席していた他の2名からPCR検査の結果陰性であったという連絡が入った。2名は基礎疾患があった関係上、どうやら早めに検査を受けることができたらしい。感染した本人も熱が下がり、回復傾向にあるという。2週間の期限まではまだ時間があるため安心はできないが、友人たちの知らせが深刻なものでなかったことはなによりだ。
自治体に手配してもらったドライブスルー形式のPCR検査については、改めてリポートしたいが、筆者のように、年末年始の会食から1週間以上経ってからPCR検査を受けるケースは意外と多いという。濃厚接触者もまた、行政や医療従事者への大きな負担となることを改めて認識させられる出来事となった。
(穂波章)