農水省のHPにアクセス殺到!「稲作ゲーム」大ヒットの要因は農業体験に!?

《とにかく稲作の描写が本格的過ぎる!これだったのか!!うちの子がサンタさんに、お米を作るゲームをもらうと言ってたやつは!》

 12月のクリスマスシーズンを前に、子供だけでなく、大人をも魅了してやまないのが、話題のゲームソフト「天穂のサクナヒメ」(税込5478円)。同人ゲームサークル「えーでるわいす」が企画・開発し、マーベラスが11月12日に発売したアクションRPGゲームだ。

「内容は、鬼が支配するヒノエ島を舞台に、主人公のサクナヒメが、稲作をしながら力を付け、農具を武器に敵と戦うというもの。このゲームではプレイヤーが米づくりを実践し、ひとつひとつの工程を丁寧にこなして高品質の米を収穫することで、強くなっていきます。ただ、稲作には田起こしから種籾の選別、田植え、害虫対策、稲刈り、精米まで10工程以上もあり、たとえば、種籾を塩水に入れて水面に浮いてくる低品質なものを取り除いたり、天候に合わせて田んぼの水量を管理したりと本格的な作業が必要になります。そこで、なんとか主人公を強くさせたいという思いから、プレイヤーたちがこぞって農林水産省のHPにアクセス。結果、ネット上で『農林水産省の公式HPが実質的な攻略wiki』と話題になり、『農林水産省』がTwitterでトレンド入りしてしまったというわけなんです」(ゲーム雑誌ライター)

 さらに、それを見た業界紙「日本農業新聞」がこの稲作ゲームを取り上げ、さらに全農広報部も公式ツイッターで「あの…某お米づくりゲームをなさっている皆さん…よかったら弊会の解説冊子『田んぼを作って稲づくりを体験しよう』を参考になさってください……」と畳みかけたことも話題となって店頭販売のパッケージ版の売り切れが続出。

 SNS上には《サクナヒメどこ行っても売り切れなんだけど》《4軒回ってようやく見つけた……》《令和の米騒動だ〜!!》と、ちょっとした騒動に発展したのである。

 とはいえ、なぜ、ここまで注目されることになったのか。

「実はゲームの開発者である『えーでるわいす』のスタッフは、ゲーム開発のために農業協同組合(JA)が無料配布している稲作キットを手に入れ、まずはバケツで稲を育てることから始めたのだとか。そして、田起こしから精米までを実際に体験。古い時代の稲作については、農業大学や全国の歴史資料館を巡り、現代農業についてはインターネットや国立図書館の学術論文をもとに勉強しながら知識を得たといいますからね。つまり、『天穂のサクナヒメ』には、地道な調査に裏付けられた稲作のエッセンスがふんだんに詰め込まれているということです。また、京都や古民家で有名な白川郷などを訪れて日本の伝統家屋についても入念な調査を行ったといいますからね。そうした細部のこだわりもプレイヤーを惹きつける魅力となっているようです」(前出・ゲーム雑誌ライター)

 今や長寿番組となった『ザ!鉄腕!DASH!!』のDASH村しかり、農業や田舎暮らしは口でいうほど簡単ではない。しかし、自然界から厳しい条件を突きつけられるからこそ視聴者は惹きつけられるのだろう。米づくりを知らなくても「天穂のサクナヒメ」にハマるユーザーが続出するのも理解できる。

「遊び心も大切ですが、やはり作り手もユーザーも真剣に米づくりを極めようとしている点が興味深いですね。ユーザーの間でも《米ってこんなに作るの大変なんだ》《これからは大切に一粒一粒味わって食べよう》と、現実世界でも米を大事にしようという思いが広がっています。農水省のお役人が作ったお決まりのパンフレットやポスターでは、ここまで若者の心をつかむのは難しいでしょうね」(業界紙記者)

 ゲームのヒットをきっかけに、お米を大切にする若者が一人でも増えることを願ってやまない。

(灯倫太郎)

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