コロナがあぶり出した偽装結婚の闇「性産業の北欧女性は3万円が払えずに…」

 言うなれば、紙切れ1枚の犯罪……。それだけに罪悪感が薄れ、小遣い稼ぎの気持ちで、犯行に加担する日本人男性が後を絶たないという。

 ルーマニア人ホステスと客として知り合い、偽装結婚したとみられる男女が、8月14日、警視庁に逮捕された。逮捕されたのは神奈川県平塚市の性産業店の従業員でルーマニア国籍の33歳の女と58歳のタクシー運転手の男だ。

「警視庁によると、2人は2017年1月、結婚する意思がないにもかかわらず、市役所に虚偽の婚姻届を提出し、受理させた偽装結婚の疑いがもたれています。女は在留資格の期限が切れる直前だったため、店に客として来ていた男に『もっと日本に残って、お金を稼ぎたい』と、結婚を持ちかけたということですが、女は偽装結婚する条件として、男に毎月3万円を渡していたということです」(社会部記者)

 かつて、偽装結婚といえば、フィリピンや韓国を始め、主に東南アジアがその多くを占めていたが、ここ数年は中国やロシア系といった女性が増えていると言われる。全国紙社会部記者が言う。

「理由はもちろん金です。というのも、日本に住んでいる我々にとっては、給料が高いという印象はないかもしれませんが、発展途上の国と比べると、それは今でも雲泥の差であることは間違いない。たとえば、日本での年収が300万円を向こうの物価に換算すると、その3倍から4倍、つまり、900万円〜1000万円程度の価値があるということ。だとすれば、多少のリスクがあるにせよ、日本人と結婚したいと考えるのも不思議ではないということです」

 ただ、偽装結婚の場合、通常は外国人側が多額の手数料をブローカーや結婚相手に支払うことになるのだが、

「一般的には現地のブローカーに多額の金を払い、偽装結婚および日本入国の仲介をしてもらい、日本にいる関係者が入居先や働き先の斡旋をする、といったケースが大半。現地ブローカーに支払う報酬の相場は、日本円でだいたい100万円から200万円程度で、支払方法は先払い、分割とケースバイケースですが、偽装結婚が出来れば、長期滞在許可や永住権が得られやすいため、メリットは手数料以上に大きい。そのため、多少ブローカーにふっ掛けられても、条件を飲んでしまう女性が後を絶たないと言われています」(前出・社会部記者)

 日本人との結婚で得られる「日本人の配偶者等」、略して“日配”を取得すれば、就労活動に制限がなくなり、転職や副業も自由になるばかりか、婚姻後3年以上日本に在留しているなどの要件を満たせば、比較的早く在留資格の更新が必要ない「永住者」への変更申請ができるようになるという。

 とはいえ、コロナ禍の影響で、“お水系”や性産業に従事する女性の収入が激減。ブローカーや男性側への支払いが滞るトラブルが急増しているとも言われる。

「今回のケースについては、まだ詳細は不明ですが、”夫”にすれば毎年妻のために健康保険から年金等まで給料から天引きされても黙っていたのは、月3万円の振り込みがあればこそでしょう。それがコロナ禍で全く入ってこなくなったとしたら……。取り調べに対し”夫”は容疑を認め、女は容疑を否認しているといわれていますからね。そう考えると、払ってもらえないから出るところに出た、と考えても不思議ではありませんね」(前出・社会部記者)

 ブローカーに大枚を払い、偽装結婚目的で来日し、斡旋してくれる性産業の店で働きながらチャンスを待つという外国人女性も増えているというが、昨今では、「ブライダル」と称して、独身男性に対し偽装結婚を応募する裏バイトサイトもあるのだとか。

 これまで水面下で横行していた偽装結婚という紙切れ一枚の犯罪が、コロナ禍の経済的苦境で次々とあぶり出されそうな気配だ。

(灯倫太郎)

※写真はイメージです

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