「コロナ感染ゼロ」岩手に学ぶ夜の防衛マニュアル「本番地帯の女の子は…」

 スワッ! 第2波襲来!? 「東京アラート」解除から1カ月の東京では、新規感染者数が連日の200人超え、7月16日には286人の最多感染者を記録するなど、コロナ猛威が再燃している。一方で、全国で唯一コロナ感染者ナシを更新しているのが岩手県だ。ポツンと1県ゼロの実態に迫る!

 今年の4月から、故郷・岩手県に戻ったジャーナリストがコロナ・ゼロ地帯の様子を語る。

「もちろん数字上ではゼロですが、県民は誰も信じていませんよ。新花巻、盛岡など新幹線が停車する駅の近くの繁華街では、新幹線が東京のウイルスを運んでくるという噂が吹聴されていて、サラリーマンたちは奥さんに『絶対、飲みに行かないように』と厳命されているほどです」

 感染ゼロの別天地と思いきや、いつ出るか、ヒヤヒヤしている毎日だという。

「先日、カラオケスナックをのぞいてみたら、店は普通に営業していました。ママは『お客がだいぶ減った』と嘆いていましたが……。1曲歌い終わるごとにマイクをアルコール消毒のティッシュで拭いて除菌していますが、さすがにアクリル板の仕切りはなかった」(ジャーナリスト)

 もっとも、スーパーでは店員もマスク着用、レジにはアクリル板が設置され、ノーマスクでは店内に入れない。この雰囲気は東京と変わらないという。

「店が潰れては大変と、スナックの常連客が定期的に通っているんですが、ママも含め、客同士で県外に出ていないことを確認し合っています。そうやって『自己防衛』している。客の1人に東京から来たことを話すと『次はいつ東京に行く?』としつこく聞いてくるんです。東京の“コロナ菌”を岩手でバラまかれては困るということなんでしょう。Uターンしてもしばらく店に来ないと説明するとホッと安心していました」(ジャーナリスト)

 現地では、東京モンに厳重注意することが自己防衛術のひとつとなっているようだ。

 地元の社会部記者が岩手県のコロナ感染状況を説明する。

「東北は全国でも比較的感染者が少なく、いちばん多い宮城でも7月9日に累計感染者数100人を突破したばかり。緊急事態解除後も、翌10日に青森で2カ月ぶりに10代の学生が感染するなど、ポツポツとですが感染者は出ています。岩手に近い宮城県北の気仙沼でも感染者が出ていますが、不思議と岩手だけがゼロ記録を更新しているんです」

 7月10日時点で、残る東北での累計感染者は秋田16人、青森29人、山形71人、東京に近い福島でも83人と、7000人超えの首都・東京とはもはや比較にならない数字となっている。

「反面、4月には千葉から帰省中に破水した妊婦を岩手県立病院が『県外の方はお断り』と受け入れを拒否したことが、行き過ぎた拒否反応と批判を浴び、のちに『引き受けるべきだった』と釈明に追い込まれています」(社会部記者)

 兵庫・井戸敏三知事(74)は東京が「諸悪の根源」と放言したが、岩手ではさらにその傾向が強烈だという。

「飲食店では県外ナンバーの車があると、客が店主にどういう理由で来ているのかと問いただすのはよくある光景です。ラーメン屋やスナックの入り口に『県外からの入店お断り』というただし書きが貼られていることも珍しくありません。それどころか先日、散髪に行って『東京から帰省している』と雑談したところ、ふと見たら床屋のオヤジがいつの間にかマスクを着用していたんです。会計の時にも、支払った1000円札を親指と人さし指2本の爪で、まるで汚いものを触るようにつまんでいた。帰ったあとに除菌していたかもしれない」(ジャーナリスト)

 一方、県をまたぐ移動の自粛解除を受け、地方遠征を開始したのが、性産業ライター・前田たかより氏だ。

「途中立ち寄った道の駅では、試供品のお菓子が包装紙にくるまったまんま置かれているのを見て驚きました。やはり、客同士で感染させてはいけないという気遣いなのでしょう」

 県内の観光地では客足が激減したことで、売れ残った食品などの土産物が賞味期限切れ前に試供品として提供されることもあるようだ。一方、最大の歓楽街はまるで灯が消えたよう。前田氏が続ける。

「岩手最大の歓楽街といえば、盛岡市内の映画館通り。その裏手には“本番地帯”があるのです。以前はそぞろ歩きしていると客引きが積極的に誘ってきたんですが、コロナ後は用心しているのか全然声をかけてこないんです。やはり、一見客はヘタに誘えないという感じがヒシヒシと伝わってきました。といっても、営業しないわけにもいかないので、女の子はしっかり紹介してもらえましたが……」

 自己責任、1対1の濃厚接触ならば県外客でもOKなのだろうか。

「現地でも東京の感染者数が何人出たというのがトップニュースです。いまだ県内ゼロだからこそ、コロナへの関心度が高い。もし自分の地域から最初の陽性者が出たらマスコミが来て袋叩きに遭うと、誰もが戦々恐々としているんです。もしも自分が感染したら『ここにはもう住めないだろう』と冗談めかして話す人もいます。岩手のような田舎では、最寄りのバス停まで10キロもあり、病院に行く気にならない人もいる。熱が出ても車がないから病院に行かずに寝て治す人だって少なくない。肺炎で死んだ人が、実はコロナかどうかなんて死後に調べないので、実際には『隠れ陽性者』はいると思っています」(ジャーナリスト)

 厳しい見方をすれば「コロナ感染者ゼロ」ではなく、「感染報告なし」と捉えたほうが賢明かもしれない。

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