無観客で開幕した日本のプロ野球は、7月10日の試合から制限つきで観客を入れている。この有観客試合はこれまでの「大波乱」の流れを変えることになるか。
2季ぶりのリーグVを目指しながら4位(7月9日現在、以下同)と低迷する広島では、佐々岡真司監督(52)にこんな追い風が吹いていた。
「緒方孝市前監督(51)の時は、東京近郊の試合になると必ず顔をのぞかせる旧知の某紙ベテランデスクがいました。チーム内から『試合前の練習中、OBみたいにして偉そうにベンチ付近でふんぞり返ったり、周囲をうろついたりして大迷惑』とウザがられていた。よく主力選手たちも『またあいつ、来てるよ』とピリピリしていたけど、佐々岡監督になって『もう来ないだろう』と今は誰もが安心し、雰囲気がよくなっています」(地方局関係者)
近年はBクラスが定位置となっている中日では、就任2年目となる与田剛監督(54)と伊東勤ヘッドコーチ(57)の関係が危ういともっぱらだ。
「一昨年オフ、入閣の経緯にひと悶着ありました。球団が伊東監督就任で進めていたのに、中日新聞本社が生え抜きにこだわって与田監督を推したんです。そのため折衷案で現職に就いた伊東ヘッドにとってはおもしろくない状況でしたが、経験のない与田監督で立ち行かなくなれば、いずれ繰り上げで監督に昇格する目があると読んでいた。だから、采配面で不安のある与田監督をサポートする立場で我慢していたのです。しかし潮目が変わりました」
こう打ち明けた球界関係者は、伊東ヘッドの心情を揺るがしている事態の詳細について、
「今季より白井文吾オーナー(92)が退任して、大島宇一郎オーナー(56)が新たに就任。これまで監督人事が持ち上がると、立浪和義氏(50)待望論が少なからずありましたが、スキャンダルが付いて回る立浪氏を評価していない白井オーナーの意向でその案は潰されてきたんです。しかし新オーナー誕生でそのシガラミがなくなり、たとえ与田監督が不振で失脚しても立浪監督就任の流れとなった。もはや中日で上がり目のなくなった伊東ヘッドは、与田監督の下という立場に辟易としているんです。トップの2人がうまくいっていなければ、チームも安定しないでしょう」
さて、パは開幕からロッテ、そして楽天が好調モードをキープ。昨季Bクラスに沈んだ2チームが開幕ダッシュに成功している。そして、昨オフにFAやその人的補償、トレードなどで複数の選手が行き来したこの2チームの対戦は今季、因縁試合と化している。
特にロッテから楽天に加入した複数の選手が古巣のコーチへの「憎悪」を新天地での原動力としているという。ロッテ関係者が苦笑しながら、こう漏らした。
「ウチから楽天にトレード移籍した涌井秀章(34)が開幕2連勝と去年とは見違える投球を披露しています。早くも古巣斬りを果たしましたが、冷遇したロッテの『陰の指揮官』鳥越裕介ヘッドコーチ(49)への“怨念”がモチベーションです。ロッテ時代は口を開けば『あいつを何とかしてくださいよ』と愚痴をこぼしていたほど。その思いはやはり、好き嫌い起用に泣かされて楽天にFA移籍した鈴木大地(30)も同様です」
最後に、パで多くの野球解説者やOBから優勝候補と目されているソフトバンクが開幕からなかなか波に乗れないでいる。キューバに帰国中のデスパイネ(34)とグラシアル(34)の中軸2人に来日不可能という状況が続いていることも大きな理由だ。その穴埋めをしなければならない4番バレンティン(36)も好不調の波が激しく、工藤公康監督(57)ら首脳陣は頭を抱えているという。
「特大の本塁打で破壊力を見せつけてはいますが、打率は2割5分そこそこ。まだまだ新天地とパの投手になじめていません。何よりバレはヤクルト時代から六本木に遊び仲間が数多くいて『アイ・ドント・ノー・ナカス(中洲)。アイ・ラブ・ロッポンギ!』と今でも叫びながら涙目になっているからね。チーム関係者は『バレのバットを大爆発させるにはコロナ禍が早く収まり、安心して中洲で遊べる環境を整えてもらうしかない』と苦笑いしていますが、社会情勢を考えると、それも難しいでしょう」(球団OB)
悲喜こもごものセ・パ各球団のうち、はたして最後に笑うのはどのチームか。