立憲民主党が夏の参院選比例代表で蓮舫元参院議員の公認を決めた。この決定に党内から反発が起きるとともに、立民支持者の間からも「国民民主の玉木代表が引き起こした“山尾ショック”の二の舞いにならなければいいが」という声があがっている。
立民関係者が言う。
「蓮舫氏を比例候補に立てる話は今年3月にも浮上したが、党内から『蓮舫は離党して都知事選に出た。それを再度比例で入れると、ほかの連合関係候補が弾かれて落選する可能性がある』『野田側近政治だ』と猛反発があり、一度潰れた話。それを今回強引に決めた。そのため水面下では、野田佳彦氏を代表から引きずり下ろせという強硬論も飛び出す始末だ」
蓮舫氏擁立がここまで批判される背景には、連合の反発だけでなく、昨年の都知事選の経緯もある。立民関係者が続ける。
「蓮舫氏は昨年6月に立民を離党し、都知事選に打って出た。しかし小池百合子氏に大差で敗れたばかりか、石丸伸二氏にも後れを取り3位に終わった。そのため蓮舫氏はSNSで『120万を超える人が蓮舫と書いてくれた。これでまた国政に戻るというのは渡り鳥みたいで私の中では違う』と表明、第二の人生を歩む方向も示唆していた。その舌の根も乾かないうちに、また国政復帰を模索する姿にはあきれる声も出ている」
蓮舫復帰で野田代表は何を模索しているのか。反野田派の関係者が語る。
「野田氏の戦略は中道右派で政権を作りもう一度、総理の座に就くこと。だから自民党と連立を組むことも、維新や国民民主とも組む可能性もある。ただ、その際にはできるだけシンパを集めてイニシアチブを握りたい。そのためには14~15人規模の野田勉強会『花斉会』の仲間を温存し、さらに増やす必要がある。蓮舫氏復活は、その一環だ」
一方、蓮舫氏サイドの思惑はどうか。政治アナリストが明かす。
「蓮舫氏も都知事選後、『国政に戻るというのは私の中では違う』と言い切っていたが、引退や隠居には57歳では早すぎる。政治経験を活かしてテレビのコメンテーターという道もあったが、金子恵美氏や杉村太蔵氏らとは違って、蓮舫氏クラスになるとテレビ局が重すぎて敬遠する。かといって、なかなか普通の仕事も得にくい」
そして、政治アナリストはこう続けた。
「国会議員は国民のために法律を作り、世の中のために行動できるという魅力がある。一方で、年収は約2000万円に加え、様々な特権もつく‟おいしい”仕事だ。参院議員は衆議院議員ほど忙しくもなく、地元回りも少なく、しかも任期は6年ある。参院議員の中には6年間で億単位の資産を残す議員もいると言われる。蓮舫氏がそうしたカネの魅力に引きずられているとは思いたくないが」
いずれにしても野田代表の思惑と蓮舫氏の政界復帰願望が合致したのが、今回の蓮舫氏公認と言えるだろう。だが、蓮舫氏の公認出馬となると、今後党内外からの反発がさらに強まる恐れもある。冒頭にも記したように、連合は依然として猛反対の姿勢を崩さない。
「有権者にしても、一度引退まがいの宣言をした人物が古巣に舞い戻るという構図は、国民民主党が山尾志桜里氏を擁立しようとして揉めた末、結局外された“山尾ショック”を思い出させる。国民民主党は“山尾ショック”で党支持率が大幅ダウンしたが、蓮舫氏は山尾氏のような不倫疑惑はないにしても釈然としないだろう」(政治部記者)
立民に「蓮舫ショック」が起きないよう祈りたいものだ。
(田村建光)