「その日、人類は思い出した」SNSで「進撃の巨人」に例えられたトランプ氏の“関税爆弾”

 アメリカのトランプ次期大統領が、来年1月20日の就任を前に大きな爆弾を落とした。11月26日、隣国のメキシコとカナダに25%の関税をかけるとⅩでブチ上げたのだ。

「1月20日の就任初日にさっそく大統領令に署名するとしました。実現すれば、3カ国の間で結ばれている幅広い分野での関税撤廃の協定(USMCA)が失効する恐れがあります。すると投資家の間でリスク回避の動きが高まって、ドル安・円買いが進行。中国には追加で10%の関税をかけるとしたので、人民元、カナダドル、メキシコペソも下落しました」(経済ジャーナリスト)

 またUSMCAがあることから、世界中の多くのメーカーが人件費の安いメキシコに工場を築きアメリカへの輸出を行っているため、世界的な企業にとっては大きな痛手となる。日本も例外ではなく、トヨタ、ホンダ、日産、マツダなど主要自動車メーカーは、メキシコに工場を持つ。

 また日本にとってより迷惑なのは、トランプが爆弾発言をアップするのが、日本の株式市場が始まる前ということ。実際この発言も投稿されたのが午前8時35分で、まさに東京株式市場が始まる直前。このトランプ・ショックで26日の株価は前日より338円安で、一時は750円以上下落した。

 同じことはトランプ政権1期目を前にした時にも起きていたことから、「2016年の悪夢再び」ということで、SNSでは「進撃の巨人」で壁が壊されたことになぞらえ、「その日、人類は思い出した」などと例えられている。

 ところで、関税アップの理由はカナダ・メキシコ両国からの不法移民と犯罪・違法薬物流入の阻止とされている。端的に言えば、フェンタニルという薬物流入の阻止だ。

 フェンタニルは本来、癌などの鎮痛剤として用いられるが、これを成分とした違法薬物がアメリカに多く蔓延している。服用すると無気力になって幻覚などに襲われることから、人呼んで「ゾンビ麻薬」。この対策が大統領選挙での大きな争点の1つでもあった。そして真のターゲットは、10%追加関税とあるように中国だ。

「ゾンビ麻薬は中国から薬品がメキシコなどに輸出され、現地で合成された上でアメリカに持ち込まれている。もちろんアメリカは以前からこれを問題視しており、構図から、『現代のアヘン戦争』などとも呼ばれていました。中国も、気に食わない国には対抗として関税措置を活用してきました。ですから今回のトランプ発言は、この手法でやり返したということになります」(前出・経済ジャーナリスト)

 となればトランプの狙いは、なかなかしたたか。だがそのために、数多くの企業と経済が迷惑を被るのは勘弁してほしいものだ。

(猫間滋)

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