1800年から1816年まで17年をかけて日本全国を測量した伊能忠敬。初めて実測による日本地図を完成させた人物として知られており、日本人であれば誰もが一度は学校の授業で習ったはずだ。
その伊能忠敬が令和の若者の間でぐんと知名度を上げている。キーワードは「伊能忠敬 界隈」だ。
9月4日放送の「めざましテレビ」(フジテレビ系)では、若者言葉の新常識として、「○○界隈」という言葉を取り上げた。中でも「伊能忠敬 界隈」は、長距離を歩くことを指す言葉だとし、若者の「電車賃払いたくないので、3駅くらい歩きます」といった声を紹介した。
ところがこの放送に「たかだか数キロ歩いたくらいで伊能忠敬を気安く語るな!」という声が続出。伊能忠敬の歴史的な功績と、日々の節約行動を結びつけることに違和感を抱く人は思いのほか多かったようだ。
今年4月には風呂に入らなくても済むドライシャンプーの話題から、風呂に入るのが面倒という人が相次ぎ、「風呂キャンセル界隈」というワードが大きな話題になった。そもそも若者は「界隈」をどのように捉えているのだろうか。
トレンド誌編集者が語る。
「界隈には『そのあたり一帯、その付近』という特定の場所を指す意味がありますが、若者の間では、主に属性や特定のジャンル、業界を意味する言葉として使われています。何かのグループや組織などに所属しているという安心感があるのかもしれません。元々はオタク用語でしたが、SNSの普及でここ数年で一気にメジャーになりましたね」
いうなれば、どんなことでも「○○界隈」と名付ければ、一種の流行となってしまうというわけか。もっとも本物の「伊能忠敬 界隈」には1日に30~80kmも歩くというガチ勢がおり、電車賃をケチって1~2駅分を歩く若者とはレベルが違う。
せめて1日に数万歩は歩くという本格派を紹介すれば、伊能忠敬を軽んじているという声は上がらなかったかもしれない。
(ケン高田)