7月26日のパリ五輪開幕を前に、アンヌ・イダルゴパリ市長が15日、セーヌ川を17日に泳ぐことを表明した。大会組織委員会のトニー・エスタンゲ会長らと共に遊泳するという。
周知のようにイダルゴ市長は、トライアスロンの水泳や、オープンウォータースイミングの2競技を行うセーヌ川の汚染が懸念されていることから、水質の問題が解消されたことをアピールするために、みずからセーヌ川を泳ぐと公言していた。
「イダルゴ市長は、当初は6月23日、30日を予定していましたが、5月の大雨によって水質が悪化したために遊泳を延期しています。セーヌ川は、雨で水かさが増すと道路の側溝や下水管から水が溢れて流れ込み、大腸菌などが増殖するのです。ただ、改善が見られていることも事実で、7月13日にはウデアカステラスポーツ・五輪相が市長に先駆けて遊泳しています」(外信部記者)
イダルゴ市長がセーヌ川にこだわるのには理由がある。近年の五輪は「小規模化」が謳われて久しいが、パリ五輪でも、ビーチバレーがエッフェル塔、馬術や近代5種はヴェルサイユ宮殿を「二次使用」し、選手村から競技場までの距離を半径10キロ以内に収めている。セーヌ川の競技使用もそうした「コンパクト五輪」施策の一貫なのだ。もっとも、コンパクトにこだわるあまり、五輪の「経済効果」も小規模になりそうで…。
「セーヌ川の汚染対策で使った費用は約2500億円とされています。一方で、日本のシンクタンクの試算によれば、パリ五輪の経済効果も2500億円程度になると見られている。つまり、セーヌ川対策が経済効果を食ってしまっている構図です。しかも、ホテルの宿泊費の高騰や、地下鉄の値上げなどで観光客離れも指摘されており、経済効果に関する目論見は大幅に外れるのではないかとの見立てもありますね」(前出・記者)
せっかくセーヌ川にダイブしてパリ五輪を盛り上げようとしたものの、残念ながら、経済効果に関しては市長の思惑とは裏腹の結果になってしまいそうなのだ。
(猫間滋)