巨人の丸が2軍で再調整となった。6月5日に出場選手登録を抹消されるまで、40試合で打率2割2分7厘、4本塁打、8打点と打撃不振やった。実績のある打者やから、急にスイングが悪くなるわけがない。ガタガタになったのは、タイミングがうまく取れてないから。坂本、梶谷を故障で欠く苦しいメンバーで、丸にファーム行きを命じた原監督は苦渋の決断やったと思う。
打撃で一番難しいのはタイミングを合わせること。特に丸のように大きく足を上げてタイミングを取るタイプは、好不調の波が激しくなりやすい。悪い時はだいたいタイミングが遅くなり、ボールに差し込まれてしまう。捉えたはずの球がファウルになったり、詰まったりする。差し込まれないように振ろうとすると、今度は体が突っ込んで変化球を待てなくなる。そうなるとドツボにはまる。
僕も調子が悪い時はタイミングの取り方が遅くなっていた。対処法は発想の転換で、大きくタイミングをとった。投手のほうにいったん頭を動かしながら、その反動で左足の軸足に体重をかけ、そのままクルッと体を回転させることを心がけた。しっかりと軸足に体重を乗せて、下半身で振ることを心がければ体は突っ込まなくなる。それと、練習ではインハイの速い球を想定して振り込んだ。調子が悪い時は背中が丸まることが多く、総じて高めを叩けなくなる。
肉体的な原因もある。打者が5月から6月にかけて不振に陥る場合、下半身が弱くなっていることが多い。春のキャンプで走り込んで鍛えた足腰の「貯金」は、開幕して2カ月ほどでなくなってくる。シーズン中はどうしてもランニング量が少なくなってしまう。丸の場合は、開幕直後に新型コロナウイルスに感染して隔離された期間があったから、なおさら下半身にガタがきてたかもしれない。阿部2軍監督のもと、若手に交じってランニングで汗を流すのはいいこと。腕を振ることで体のバランスもよくなるし、キレも出てくる。最近は走り込みが非科学的と言われることがあるけど、ランニングに勝る練習はないよ。
僕も大熊さんがコーチになると、ベテランになってからもかなり走らされた。「これが1カ月後に効いてきますんや」などと言われて、外野のポール間のインターバル走を往復3本。試合前練習でヘトヘトになった。たまに往復2本で許してもらえた時は、どれほど楽に感じたことか。大熊さんの言うとおり、下半身をいじめた効果が実際に1カ月後ぐらいに出てきて、体にキレが出てくる。丸も今のうちにしっかり走り込みをして、シーズン最後までもつ下半身の「貯金」を作っておかないといけない。
巨人は交流戦でも波に乗れない戦いが続いている。しかし、幸いにも首位の阪神も勝ち負けが交互に続くオセロ状態の戦いが続き、ゲーム差はそれほど開いていない。シーズンはまだ半分以上残っている。坂本らがケガから復帰して、丸が復調すれば阪神を追いかける態勢は整う。
丸は打率が2割前半に低迷しているとはいえ、出塁率は3割5分4厘もある。これは打率3割5厘の梶谷の出塁率3割5分8厘と遜色ない数字。選球眼のよさもさることながら、それだけ相手投手が怖がってボール球を投げているということ。やはり丸の復活なくして、巨人の逆転優勝はない。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。