国内初のスマホ完結型バンク「みんなの銀行」は何が画期的なのか

 ネット銀行の台頭やフィンテックの登場などによって、既存の銀行がかつてのようには稼げなくなった時代、さらに地銀は少子高齢化社会もあってさらに生き残りをかけた競争は厳しい。

 そんな中、福岡県の第一地銀で2019年‐20年の地銀総資産ランキング1位で“地銀の雄”とも言える「ふくおかフィナンシャルグループ(FG)」が、通常の銀行取引をスマホアプリで完結できる国内初のデジタルバンク「みんなの銀行」を5月28日にリリースし、話題となっている。

「ふくおかFGでは『みんなの銀行』の営業免許を昨年12月に取得、1月にシステムを稼働させて5月のサービス開始を予定していました。使えるサービスは普通口座、貯蓄預金、利用金額の0.2%がキャッシュバックされるデビットカードで、個人・法人向けの金融サービスを展開しているマネーフォワードと提携して、他の金融機関の口座やクレジットカード、電子マネーの出入金履歴を一元的に管理することができます。なにしろスマホアプリをいじるだけという便利さですから申し込みが殺到したんでしょう。リリースされた28日の午後から申し込みをしたんですが、途中の本人確認のビデオ通話認証がなかなかつながらず、結局夜遅くになってやっとつながるという状態でした」(経済ジャーナリスト)

 みんなの銀行では普通預金を「ウォレット」と呼ぶ。つまりスマホ1つで支払い・振り込み・入金ができるので、スマホが「財布代わり」になるということだ。そして貯蓄預金は「ボックス」。「箱」のイメージで用途を分けて、その都度、箱の中から必要なお金を出し入れする。出入金は「レコード」。一元的に出入金の履歴を「記録」として振り返ることができるからだ。もちろん利用は基本は無料だが、月額600円を支払えば、ATMでの出入金が月15回、銀行振り込みは月10回までが無料になるほか、デビットカードのキャッシュバック率が1%になって、さらに口座の残高が不足している時には最大5万円まで立て替えてくれるサービスも付く。

「全国展開のサービスでまさに地銀の枠を超えた取り組みです。もともと福岡銀行を中核とするふくおかFGは、熊本、長崎で3行を傘下におさめるなど、九州というブロックで銀行業を展開して全国的な地銀再編の流れを作った銀行で、その先見性で知られていました。それが今回は全国展開で、しかもデジタル銀行ですから、Z世代以降のスマホが生活の中にある若い人を取り込もうとの意図がそこにはあって、逆に言えば、少子高齢化で若者の数が少なくなる中、ネット銀行に流れがちな若者の銀行ニーズを取り戻そうとの危機感の表れでもあります」(前出・ジャーナリスト)

 さらにデジタルなので顧客の利用データが把握しやすくなり、そこから一般企業へのデータ提供や新たな金融サービスの開発にも役立てることが可能だという。さてこの新サービス、どの程度の広がりを得られるか。

(猫間滋)

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