コロナ禍は補填の適用外!? MLBが保険会社を訴えた「30億ドル裁判」の行方

 メジャーリーグ機構と全30球団が保険会社と“全面戦争”だ。複数の保険会社に対し、「損害金を払え!」と提訴したとAP通信が報じた。今季、メジャーリーグはコロナ禍により、ペナントレースは60試合にまで短縮され、そのほとんどが無観客試合となった。30球団の損失は約30億ドル(約3120億円)とも言われ、保険会社がその損害額をまったく支払わないことにカチンときたようだ。

「プロスポーツ興行団体、マラソンなどのスポーツイベントでは開催が行われなかったときに備え、『イベント中止保険』に加入するんです。でも、中止になった事情によっては保険適用外となり、支払われないケースもあります。今年2月の東京マラソンが中止となり、一般ランナーに参加費が返せなかったのは、新型コロナウイルスの感染拡大が適用される疫病・伝染病の項目が含まれていなかったからだと聞いています」(体育協会詰め記者)

 30球団が加入していた保険内容については明かされていない。ただ、メジャーリーグ側が発表した限りでは「全リスク対応」となっており、「10億ドル以上は補填されるべき」と主張している。しかし、米国内では「勝算は少ない」との見方が支配的だという。

「すでにマイナー球団が同じ裁判を起こしていて、敗訴しているんです。新型コロナのケースは該当しないという判例が出ているのでメジャーでも敗訴となる可能性は高い」(米国人ライター)

 通常のペナントレース162試合の有観客試合分の収入が補填されるのとされないのとでは、球団経営が大きく変わってくる。当然、オフに予定している選手補強の規模にも影響してくる。

「全球団とも必死だと思います。でも、保険会社を訴える前にカブスは看板投手の解雇を決めました。補填が確実なら、球団職員をリストラするなどの経費削減をやらなかったはず」(前出・米国人ライター)

 米球界への挑戦を決めた菅野智之、沢村拓一、有原航平らの年俸額にも響いてきそうだ。

 バスケ、アメフトなど他競技もイベント中止保険に加入しているが、補填を巡る裁判の話が出てきたのは、今のところ、メジャーリーグだけだ。アメリカ四大プロスポーツの中で、レギュラーシーズンがもっとも長いのは野球だ。見方を変えれば、今回の裁判はメジャーリーグ全球団の経営が厳しい状況まで追い込まれていることを物語っているようだ。

(スポーツライター・飯山満)

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