安価な弁当の代名詞的存在である「のり弁」。多くの弁当店では400円を下回る価格で販売されおり、不動の人気商品だ。
「全国でおよそ2400店舗を展開する弁当チェーン最大手の『ほっともっと』では、『のり弁当』は年間で約3400万食も売れる熱烈なファンも多い人気ナンバーワン商品。コロナ禍には1000円超えが当たり前の『高級海苔弁』が人気となりましたが、やはり、のり弁といえば手頃な値段で食べられる親しみのあるお弁当というイメージですね」(フードライター)
ところが、この庶民の味方として長年愛されてきた弁当が値上げの危機に瀕しているという。実は、国内最大の養殖海苔の産地である有明海では、海水温の上昇やプランクトンの増殖などが原因で、記録的な不作が起きているのだ。しかも、海苔が不作となるのは2年連続となっていて、乾燥海苔の共販単価(漁協が生産者から仕入れた海苔を商社などに販売する単価)が2021年度から8割も上昇。6月から海苔価格の大幅値上げに踏み切るとろこも少なくない。
「のり弁はサービスメニューとして安く提供している弁当店も多く、利益率が高くないので、海苔の価格上昇はダメージが大きいのです。結果、値上げせざるを得ない弁当屋も増えていますね。ラーメン業界には、ラーメン1杯の価格が1000円を超えると売れなくなる『1000円の壁』という定説がありますが、実はのり弁にも『400円の壁』なるものがあります。のり弁は安い弁当という絶対的なイメージがありますから、値上げに対する反発も大きいですが、このままの価格で提供を続けるのも難しく、どうしても値上げは避けられないのが現状です。『壁の崩壊』によって人気商品に陰りが出ないか懸念されるところです」(経済ジャーナリスト)
牛丼に続き、のり弁も庶民が気軽に食べられるものではなくなってしまうのかもしれない。
(小林洋三)