袴田巌さん「無罪判決」の公算大「48年間の人生を奪われた」補償額は2億円

 静岡県で一家4人を殺害したとして、強盗殺人の罪などで死刑が確定した袴田巌さん。そのやり直し裁判(再審)で検察は5月22日、再び死刑を求刑した。

 1966年6月、静岡県清水市(現・静岡市)で、みそ製造会社の専務の家が全焼。焼け跡から一家4人の遺体が見つかり、同社の従業員で元プロボクサーの袴田巌さんが強盗殺人などの疑いで逮捕、起訴された。袴田さんは無罪を主張したが、80年に最高裁で死刑が確定。2023年3月、東京高裁が裁判のやり直しを決定し、同年10月から静岡地裁で再審公判が開かれていた。

 5月22日の裁判では、検察側は状況証拠などを総合的に検討した結果、袴田さんによる犯行が十分に立証できたとして、再び死刑を求刑した。

 公判の最大の争点となったのは、袴田さんの逮捕から約1年後にみそ工場のタンクから見つかった5点の衣類。赤みが残った血痕が付着しており、有罪の決め手となった。弁護側は法医学者の見解や、弁護側の実施した再現実験に基づき、1年以上もみそ漬けにすれば、化学反応によって血痕の赤みは消失すると主張。これに対して、検察側はみそタンク内の酸素濃度は低いため、長時間みそ漬けにされても血痕は化学反応が進まず、赤みが残る可能性もあると反論している。

 23年3月に公開されたテレビ静岡のYouTubeチャンネル「テレビ静岡ニュース」では、この「袴田事件」を捜査した元捜査員へのインタビューを配信。元捜査員は事件当時、複数の捜査員が衣類の発見されたみそタンクを調べたが、何も見つかっていなかったことを証言し、約1年後に発見されたことについて、「そんなことがあり得るのか」と驚いていた。

 判決は9月26日に言い渡されるが、無罪となる公算が大きいと見られている。無罪となれば冤罪ということになり、袴田さんには国から補償金が支払われる。

「冤罪で捕まって無罪になった場合、刑事補償法に基づいて補償金を請求できます。刑事補償の金額は身柄を拘束されていた日数、1日あたり1000円〜1万2500円。上限の1万2500円でも時給換算で約520円です。安いと言わざるを得ません。袴田さんは事件が起きた1966年から刑の執行停止によって釈放された2014年まで約48年間拘束されていました。1日あたり1万2500円×365日×48年で、最大で約2億2000万円の補償金が支払われる見込みです」(週刊誌記者)

 冤罪だったとしたら、それでも安すぎる。

(石田英明)

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