競泳女子・池江璃花子選手の白血病の公表は、日本中に大きな衝撃を与えた。“血液のがん”ともいわれる白血病だが、今ではさまざまな治療法が確立。中でも期待されている白血病の治療法の1つ、CAR-T(カーティー)細胞療法が2月20日、厚生労働省の専門部会が製造販売を了承。年度内にも承認される見通しだ。
ヒトの体内でがん細胞は日々発生しているが、その都度、免疫細胞が退治し、がんの発症を阻止している。しかし、免疫細胞ががん細胞を駆除できなくなってくると、形勢は逆転。がん細胞は分裂を繰り返し、増殖していく。
「CAR-T細胞療法は、患者自身の免疫細胞を活用してがん細胞への攻撃を効率化するものです。まず、がん患者から免疫細胞を取り出し、遺伝子操作によって、がん細胞を認識する能力を高めて培養します。それを体内に戻します。体内に戻った免疫細胞は、がん細胞の目印を巧みに探し当てて、攻撃を開始。結果的に、がん細胞を死滅に追い込みます」(医療ジャーナリスト)
気になるのは治療成績だ。2018年10月1日の「日本経済新聞」は、スイス製薬大手・ノバルティスの臨床試験において、抗がん剤が効かなくなり、骨髄移植もできない難治性の白血病患者の8割以上に治療効果があったと報道。欧米では実用化されており、日本でもノバルティスが開発したCAR-T細胞療法の「キムリア」が、ついに承認の運びとなった。
薬価は、米国では1回あたり、日本円にして5000万円以上と高額。日本では公的医療保険が適用される見通しだが、ある程度の費用は覚悟しなければいけない。投与対象は再発などで治療が困難となった一部の白血病やリンパ腫で、年250人ほどと見られている。治療が難しい白血病患者には朗報だが、気になる点もある。
「実は、CAR-T細胞療法によって、がん細胞が消失しても再発するケースも出ています。詳しい原因はわかっていませんが、CAR-T細胞療法でがんが消えたとしても、決して安心できません」(前出・医学ジャーナリスト)
課題は残されているが、医学は一歩ずつ、白血病を追い詰めているに違いない。
(石田英明)