遊覧船沈没から1年、知床はいま

 乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となった知床遊覧船沈没事故から23日でちょうど1年を迎える。遊覧船は事故後、運航が自粛されていたが22年6月16日から再開。ただし、沈没した観光船「KAZU1」を運航していた有限会社知床遊覧船は同日付で事業認可取り消しとなっており、事務所は閉ざされて廃墟状態。現在、現地で遊覧船を運航しているのは4社だ。

 事故後はホテルの予約のキャンセルが続出。知床の観光産業は大打撃を受けたと報じられていたが、実際のところはどうなのか?

「コロナ禍の影響で観光客が激減し、これからという時期に起きた事故だったので地元にとっても痛手でした。その影響でホテルにキャンセルが相次いだのも事実で、昨年の夏も期待には程遠い状況でした。それでも20年、21年に比べればマシだったのですが…」(地元ホテル関係者)

 昨年10月11日から導入された「全国旅行支援」も知床の紅葉のピークは10月上旬から中旬。近年は冬場の観光にも力を入れているが、羅臼とウトロを結ぶ「知床横断道路」は冬季通行止めとなる。真冬には流氷も接岸するが砕氷船などの流氷観光で人気の網走の客足には遠く及ばないという。

「紅葉が終わるとシーズンオフで翌春まで宿泊客が減るのは例年のことですが、おかげで旅行支援の恩恵はそれほど得られていません。道東でも知床は特にアクセスが不便なため、冬場にここまで来る観光客は少ないんです」(前出・ホテル関係者)

 しかも、観光業と並んで知床の主力産業である漁業も芳しくない。鮭の漁獲高はピークの09年から年々減少の一途を辿り、すでに6分の1以下。ホテルで提供する食事のメニュー構成などにも影響が出ている。なかなか厳しい状況だが、明るい話題もあるという。

「海外からのお客様が戻ってきたことです。遊覧船沈没の件を知らないのか気にしないのかは分かりませんが、これから夏場にかけてはかなりのご予約をいただいております」(前出・ホテル関係者)

 これが本当の意味での知床に到来した〝遅い春〟となればいいが…。

ライフ