今月8日、北朝鮮の金正恩総書記が39回目の誕生日を迎えたとされる。
だが、特別な祝賀行事が開催された形跡はなく、さらに朝鮮中央通信はもとより、朝鮮中央テレビや朝鮮労働党機関紙などの主要国営メディアも、金氏の誕生日に関するニュースは一切伝えていない。
「北朝鮮では、毎月第2日曜日を『体育の日』と設定。サッカーやバスケットボールといった球技などが実施されるのですが、8日は主要メディアの多くが、朝からそういった映像を流していました」(北朝鮮ウォッチャー)
派手な演出が大好きな金総書記が、公に誕生日を祝わない理由は諸説あるが、前出のウォッチャーによれば、その最大の理由は「金氏の実母である高ヨンヒ氏の存在」だという。
「いわゆる金正恩体制の根底にあるのは、金日成氏を始祖とする抗日パルチザン一族の『白頭の血統』で、それが三代世襲を正当化する最大の理由付けになっているわけです。ところが、周知のように高ヨンヒ氏は在日朝鮮人二世。つまり同胞とはいえ、宿敵である日本で生まれたとなれば、三代世襲を正当化出来なくなってしまう。北朝鮮には『出身成分』という階層があり、日本からの帰還者は最下層の『敵対階層』か、その上の『動揺階層』に位置づけられたからです。金日成氏の母親の康盤石氏や、金正日氏の母親・金正淑氏の誕生日は、何らかの記念行事を行うものの、こと高ヨンヒ氏に関しては誕生日はおろか、その存在じたい詳らかにされていません。そのため、金総書記もあえて1月8日を誕生日と明言せず、北朝鮮のカレンダーにも日付以外の表示がない、という不思議な現象が起こっているというわけです」
とはいえ、北朝鮮国民の間では、8日が金総書記の誕生日であることは周知の事実。加えて、金日成・正日氏同様、最高権力者として自身の存在を偶像化するためには、どこかのタイミングで正恩氏自身の誕生日を「祝日」として設定しなければならず、その点においても悩みの種との噂もある。
さらに、40歳を目前にして、同世代特有の生活習慣病などが悪化しているのでは、という情報もある。
「韓国国家情報院などの分析によれば、正恩氏が権力を継承した2011年末、同氏の体重は80キロ程度だったとされますが、2021年には140キロまで急増。その後、ダイエットして夏には120キロ程度まで減ったとされますが、最近の映像を見る限り、再びリバウンドしていることは明か。しかも一時期は、ストレスの影響なのか、後頭部にはおできのようなものが出来ていたこともあり、相変わらず健康不安説が流れています」(同)
10日の労働新聞1面では、「偉大な党が私たちを導く」として金氏の発言を紹介しているが、そこには「いつも思い焦がれることが2つある。ひとつは人民が世の中にうらやむものなく良い暮らしができる共産主義理想郷を1日も早く見たいこと。もうひとつは寝ること。寝ることが本当に懐かしい」とある。かつて韓国情報当局は、金氏が不眠症に悩まされていると明かしたことがあるが、いまも睡眠に問題を抱えているのだろうか。
40歳を前に金氏にとって悩み多き年になりそうだ。
(灯倫太郎)