8月29日、NASA（アメリカ航空宇宙局）は21世紀のアポロ計画とでもいうべき、有人月面探査計画の「アルテミス1号」を打ち上げる予定だったが、カウントダウンの途中でエンジンの不具合が見つかってスタートは延期。現地時間の9月3日（日本では4日）に再び行われることになった。
「アルテミス1号は大型ロケットのスペース・ローンチ・システムに、無人の宇宙船・オリオンを搭載して打ち上げるというもの。打ち上げられたオリオンは月を周回して再び地球に戻る予定となっています。計画には日本や欧州の国も参加する多国籍によるもので、今回のロケットには日本で開発された超小型の探査機『OMOTENASHI（オモテナシ）』と『EQUULEUSU（エクレウス）』の探査機2機も搭載される予定。OMOTENASHIは日本初の月面着陸を目指します」（週刊誌記者）
アルテミス計画は今回の打ち上げを第1弾とし、2024年には宇宙飛行士をのせて月を周回、翌25年には1969年にアポロ計画でニール・アームストロング船長らが月に着陸して以来、約50年ぶりの有人月面探査を行うものだ。ちなみにアルテミスとはギリシャ神話に登場する月の女神で、アポロ計画の名称は同じくギリシア神話の太陽神のアポロンに因んだもので、アルテミスとアポロンは双子の神様だ。
今回の打ち上げはそうした目標のための準備段階なので無人。有人の月面探査では、女性及び有色人種の飛行士による月面着陸が予定されているが、それに先立って今回の打ち上げでは、スヌーピーが宇宙に飛び立つという。
「実はスヌーピーは月面探査とは切っても切れない関係なんです。月面着陸を果たしたアポロ11号のリハーサルとしてアポロ10号が打ち上げられていますが、そのときの探査船の名前が『スヌーピー』で、司令船は『チャーリー・ブラウン』と名付けられました。今回打ち上げられるスヌーピーはオレンジ色の宇宙服を着た特別仕様で、無事打ち上げられればスヌーピーが無重力状態で宙を漂う様子を全世界の人々が目にすることになるでしょう」（同）
と聞けば何ともアメリカらしい夢とジョークに溢れた話ではあるが、実は再び月面探査に乗り出した理由として、19年に初めて月の裏側に探査機を着陸させることに成功した中国との宇宙開発競争が背景にある。
そしてアルテミス計画自体、17年にドナルド・トランプが宇宙政策指令第1号に署名したことで始まったという彼の置き土産であることも考え合わせると、何とも現実的な話に引き戻されるのである。
（猫間滋）
