12月6日に臨時国会が召集されて、同日午後には岸田首相の所信表明演説も行われた。会期は21日までの16日間と短いが、衆院の任期切れ目前で組閣されたのだから、これからが本格的な新政権での論戦の始まりとなる。今後は、所信表明演説でも強調された「分配」の元となる「賃上げ」やオミクロン株への対応、子育て世代への10万円支給の是非……などが主な議題として議論が繰り広げられるだろう。
そこで実質的な岸田政権のスタートというタイミングに当たり、岸田首相は11日にも首相公邸に引っ越すのだという。安倍元首相は東京・富谷の自宅から、菅前首相は衆院議員宿舎からと、共に近い所から執務をする首相官邸に通っていたので、実に民主党政権下の野田首相以来、約9年ぶりに首相が公邸に住まうことになる。
「2代続いて首相が公邸に入居しなかったので、その理由については諸説が囁かれていました。安倍首相は第1次政権時代には公邸に入居していたので、第2次政権時代に自宅から通っていたのは、昭恵夫人が良い顔をしなかったからという『夫人説』が流れたり、あるいは05年に新しくなった公邸は小泉首相時代で、それ以後の6人の首相はどの政権も1年もつかもたないかの短命に終わったからそのジンクスを嫌ったという『短命説』もあれば、はたまた現在の公邸がある元官邸では歴代首相とその周辺の人物が殺された過去もある現場なことから、『幽霊が出る』といった『幽霊説』もありました」(全国紙記者)
結局は安倍・菅の元両首相のみがその理由を知る話なのだが、安倍首相の変わり者の奥さんのことを考えれば、「首相夫人の顔色窺い」説が有力な気もする。
公邸はセキュリティーの問題などもあって、年間の維持費だけで1億6000万円もする。取り決めでは家賃はタダ。しかも天災などの災害、有事の迅速な対応のといった緊急時には住んでいるに越したことはないわけで、それをわざわざ回避していることから「わがまま」との批判もあった。一方、公邸には住まないまでも緊急時の対応があまりにも早すぎた菅首相に関しては、「背広を着たまま寝ているのでは?」とまで言われたほど。だがいずれにせよ、「人の話を聞く」のが特技な岸田首相にあっては、波風が立つ話も良く聞いているようで、わがままを通すことなく入居を決めた。
余計な争いを嫌って協調を重んじる人柄を考えれば、いかにも「らしい」話ではあるが、一方でそこには「新しい資本主義」を掲げて安倍・菅ラインとの「決別」を図ろうとする強い意志も感じ取れなくもない。
(猫間滋)