放射性物質除去剤に転用!漂着「軽石」の意外な使い道とは?

 今年8月、大規模な海底噴火によって東京の南1300キロ海上に誕生した福徳岡ノ場。直径約1キロのかなり大きな島だが、噴火の際に放出された大量の軽石が10月に入って日本各地に漂着。場所によっては砂浜一面を埋め尽くすほどの量で、処分方法や廃棄場所をめぐり大きな社会問題となっている。

 だが、そんな漂着軽石の意外な使い道が最近話題になっている。表面にさまざまな物質をくっつける吸着剤としての活用だ。

 神奈川県立産業技術総合研究所と鹿児島県工業技術センターの共同研究グループは、軽石に多く含まれていた「ゼオライト」という物質に着目。これを沸騰させた水酸化ナトリウム水溶液に長時間浸すことでゼオライトの結晶ができる研究結果を公開した。吸着能力が大変高く、塩分を含んだ漂着軽石にも利用可能とあって各方面から注目を集めている。

「ゼオライトは消臭効果に優れ、細かく砕いたものが犬猫のトイレ用敷砂としても広く使われています。また、放射性物質や北海道などの水産業に大打撃を与えた赤潮を除去する効果もあります」(サイエンスライター)

 特に原発や関連施設での浄水用、広範囲に及ぶ赤潮の除去にゼオライトは欠かせず、いくらあっても困らないとか。表面を結晶化させたゼオライト軽石への加工は技術的にそれほど難しいものではなく、生産可能な設備を持った化学メーカーは国内に多いという。

「仕入れは輸送にかかるコストくらい。今後、民間に技術移転されれば、すぐにでも実用化させたい企業は多いはず。これまでは回収と廃棄費用に莫大な費用が掛かっていましたが、原料として使用できるようになれば一挙両得です」(同)

 処分に困る邪魔な存在と見られていた軽石だが、今回の新技術発表によって評価を一変させてしまったようだ。

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