「社会経験が少ない子供には負担が大き過ぎるし、裁判で一定期間学校を休むとなると、その際の対応をどうしたらいいのかなど、問題は山積です。自治体からの事前説明もなしで、いきなり通達されても現場では不安しかありませんよ」
そう憤るのは、公立高校の教諭だ。
最高裁などがホームページ上で法改正に触れ、裁判員に選ばれる年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられたことを公表。高校生を含む18、19歳が、2023年から刑事裁判に参加することになり、死刑の可否など重い判断を担う可能性もあることから、学生や保護者、学校から懸念の声があがっている。
全国紙記者が説明する。
「選挙権の年齢は、2015年6月成立の改正公職選挙法で『18歳以上』に引き下げられましたが、裁判員と検察審査会審査員については当時、国会でも『18歳、19歳は少年法の適用を受けているのに、人を裁く立場になるのが妥当か』という議論があり、『20歳以上』に据え置かれた。ところが、政府が今年2月、国会提出した改正少年法の法案に『付則を削除する』との一文が盛り込まれたことで、裁判員や検察審査員の年齢引き下げが質疑されないまま5月に改正法が成立。結果、改正法が施行される来年4月からは18歳、19歳という年齢が裁判員対象に含まれる予定です」
しかも改正については、最高裁などのホームページで説明しているだけで、国による各自治体や教育委員会への説明も十分とは言いがたい。これでは、教育現場が混乱するのは無理もないことだが、
「この制度が施行されれば、極端な話、18歳の少年が同じ18歳少年の『死刑判決』にかかわる可能性も出てくるわけですからね。むろん年齢だけで資質を判断することはできませんが、ロシアやイタリアでは裁判に参加できる年齢を25歳として、選挙権の18歳より上に設定するなど、国によっては選挙権と裁判に参加する下限年齢を一致させていない場合も多い。もう少し慎重な議論があってしかるべきだったのでは」(前出・記者)
裁判員法には、学生や生徒は辞退できるとの規定があり、仮に高校生が申し出れば辞退も認められているとされるが、SNS上には《社会経験もなく裁判もよくわからないのに、人に刑罰を科す判断をできるのか?》等の意見がある一方、《悲惨な証拠を目にしなけれならない不安もあるけど、人生の良い経験になるとの期待もある》といったコメントもあり、若者たちの受け止め方もまちまちのようだ。
ともあれ、早ければ来年作成される「裁判員候補者名簿」には、高校生を含む18歳以上の名が載り、23年の裁判員裁判に参加することになる。
(灯倫太郎)