またも同じ間違いが繰り返されてしまった。アイドルグループ「HIGH SPIRITS」の小室あいかさんが11月27日、東京・台場のZepp Tokyoで開催された対バンライブに出演すべく、ゆりかもめの「青海」駅に向かうところ、間違って東京西部の「青梅」駅に着いてしまい、本番に遅刻したことをツイッターで報告した。両駅は電車を乗り継いで2時間ほどの距離にある。
「この青海(あおみ)と青梅(おうめ)を取り違えるのは、アイドルあるあるの定番です。東京都出身のアイドルなら青梅という地名に『山のほうにある田舎』というイメージがあるので間違えないのですが、千葉県出身の小室さんを含めて多くのアイドルにとって、青梅は初めて聞く地名。しかも漢字の見た目がほとんど同じなので、乗り換え案内サイトで青梅までの道のりを検索した結果、駅周辺にZeppのゼの字もないことに唖然とするのです」(鉄道ライター)
同様の例としては東京メトロの霞ケ関駅と東武東上線の霞ヶ関駅(
東京湾の埋め立て地である台場地区(東京臨海副都心)への交通アクセス手段として整備されたゆりかもめは、1995年に新橋~有明が部分開業。台場地区には5駅が設置された。このうち「お台場海浜公園」と「船の科学館」、「テレコムセンター」の3駅では施設名が駅名に採用されたのに対し、「台場」と「青海」では駅が設置された場所の地名が採用されている。
そしてフジテレビの最寄り駅でもある「台場」駅は、この駅が台場地区の中心という意味も込められており、とくに違和感はないだろう。海外向けのガイドブックにも「DAIBA」と紹介されており、そこに台場駅があるのはごく自然なことだ。
それに対して青海駅については、地名としての江東区青海を目的にする人は皆無に等しい。歴史を振り返っても1983年に成立した新しい地名であり、住民は青海二丁目のマンションに住む800世帯余のみ。しかもマンションの最寄り駅はお台場海浜公園駅であり、駅名に「青海」を採用する理由に乏しいのが現実だ。
それなら他の3駅と同様に、同駅に直結した商業施設にあやかって「パレットタウン駅」とすれば良さそうなものである。そうすれば青梅と混同する恐れはゼロだったのに、なぜわざわざ紛らわしい地名を選んだのだろうか。同地の事情に詳しいライターが説明する。
「それはパレットタウンが、開業から10年後になくなるはずだったからです。ここはもともと1996年に開催予定だった『世界都市博覧会』の予定地でしたが、バブル崩壊の影響などもあり、開催の1年前に青島幸男都知事(当時)が中止を決定。使い道のなくなった土地を東京都が期間限定の事業用借地権により、森ビルや三井物産による事業体に貸し出しました。そこに1999年に10年限定で開業したのがパレットタウンであり、ゆりかもめとしてはいずれなくなる施設の名称を付けるわけにはいかなかったのも無理はないでしょう」
ところがいざ10年経ってみると、今度はリーマンショックの影響などもあり、東京都の開発計画は頓挫。Zepp Tokyoに加えてトヨタ自動車の展示ショールームである「MEGAWEB」や、森ビル系のショッピングセンターである「ヴィーナスフォート」も、2010年に閉鎖する計画だったのが先延ばしとなったのである。それなら途中からでもいいのでパレットタウン駅に改称すれば良さそうなものだが…。
「問題はパレットタウンが民間企業だということ。ゆりかもめは東京都も出資する第三セクターなので、民鉄とは異なり、民間企業の施設名を付けるわけにはいかないのかもしれません。一方で『船の科学館』は公益財団法人の経営で、テレコムセンターや東京国際展示場は東京都の第三セクター(後者は実際には孫会社)であり、いずれも公益性が認められます。それに加えて青海と青梅を取り違える利用者は少ないと見られ、ゆりかもめとしてはこの駅名に問題があるとは思っていないでしょうね」(前出・鉄道ライター)
ちなみにZepp Tokyoは、東京臨海高速鉄道りんかい線の「東京テレポート」駅からも徒歩5分程度とほど近い。地方出身のアイドルには「東京テレポートまで来てほしい」と案内するのが確実なのかもしれない。