1921年の創立から7月1日で100周年となった中国共産党(中共)。数日前から例えば北京では「偉大な道のり」と題された大規模イベントが催されたり、上海などの大都市では祝祭ムードが盛り上がり、当日の7月1日には北京で祝賀式典が催され、習近平・国家主席が「経済規模で世界第2位になるという歴史的な進歩を実現した」と語り、力強く拳を振り上げた。
確かにその通りだろう。2011年には日本のGDPを抜いて世界第2位に躍り出、今の勢いでは2028年にはアメリカを追い抜くとの試算もあって、その経済発展は日の出の勢いだ。IT、宇宙開発、エネルギーと、次世代の経済発展に欠かせない分野でも、中国は盛んに国を挙げて投資、世界の覇権を狙いつつある。
となれば祝祭ムードに酔いしれる一方、「じゃあ次の100年はどうなる?」という問いが持ち上がるもの。するとそこには、いかにも急速な発展を遂げた国が陥りそうな陥穽が横たわっていて…。
「今、中国国内では若者の草食化問題がクローズアップされています。5月頃からSNSで『寝そべり(タンピン)主義』という言葉がバズって盛んに使われるようになって、共産党も火消しに躍起となっているんです」(中国事情に詳しいジャーナリスト)
若者の上昇志向が無くなって、となれば消費も落ち込み、少子化が進む。日本ではひと昔前にそんな傾向が嘆かれており、今や常態化。むしろ、“意識高い系”な人々がガツガツっと社会で跋扈しているイメージだが、やはり遅れて発展した国のジレンマとでもいったものか、経済が急速に発展したと思ったら、先進国が抱える病までも囲い込んでしまったようだ。
「中国では都市部と内陸部など、生まれで人生が決まってしまいますからね。さらに大学の学歴がモノを言う。ところが生まれも良くて無事に有名大学に進学できたとしても、いわゆる『996』という、朝9時から夜9時までの勤務で、週6日出勤という、心身ともにすり減らすだけの労働環境に若者が嫌気をさしているんです。勝ち組でもそうなら、ましてや生まれた時点で負け組の人たちはなにをやいわんや。それなら何もせずにいようと考える若者が増え、車や住宅といった大型消費は落ち込み、不安で恵まれない将来をはかなんで結婚・子づくりといったコースが忌避され、1人っ子政策で歪んだ人口動態に輪をかけて少子化が急速に進んでいるのが現状です」(前出・ジャーナリスト)
5月に中国で10年に1度行われる国勢調査の結果が公表されたが、高齢者が6割増加する一方で、出生数は前年比2割減という結果だった。もちろん中国のことなので、実際の数値よりも少子化は深刻との見方もあるが、いずれにせよ焦った中共は「3人っ子」政策を打ち出したものの、人々のマインドが変わるには相当の時間がかかる。
そして昨今のキーワードとなっている「寝そべり主義」に対しては、中国当局が問題視。14歳から28歳までの中共エリートの若者で構成される青年団は、中国版ツイッターのウェイボーで「“寝そべり”はいらない」とつぶやくものの、そんな声が広く届くわけがない。
衣食足りて礼節を知る。出展は中国の『管子』だ。アメリカとの経済戦争で世界の覇権を争う前に、自由や民主主義といった内政の課題解決が急務なのだから、今回の周年を機にぜひとも本国の故事に習って欲しいものだ。
(猫間滋)